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風が吹く度に、さらさらと前髪が揺れている。前に会った時より、幾らか前髪が伸びている事に気が付いた。君の表情を隠してしまう前髪は、揺れるばかりだ。君を起こさぬ様、そっとタオルケットを掛ける。網戸にした窓からは、初夏の風が吹き込んでいる。窓際に君が吊るした風鈴が、ちりんと鳴っていた。

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#いいねされた数だけ書く予定のない小説の一部を書く
というタグで書いた小説をまとめました。

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私は彼の横顔が好きだった。遠くを見る目、本に目を落とす時の伏し目がちな目、珈琲を飲んだ後はゆっくり2回瞬きをする癖。それは私だけが知っている、彼の癖や好きな部分だ。これは誰にも話さず、私の胸の内にそっとしまってある。子供の頃の、宝箱にしまう様に、ひとつひとつを大事にそっと仕舞う。

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どうしても眠れない夜というものがある。身体はすっかり疲れているのに、脳だけが冴え渡っている。そんな夜が正に今夜であった。明日も仕事で早いのにとか、溜まっていく洗濯物の事を考えてみたり。無駄に脳が思考する。こういう時は羊を数えるのだったか。羊を数えても眠くならず、疲れるだけだった。

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息を吸って、息を吐く。心臓が一定間隔で鼓動する。夕焼けに目を細めて、瞬く。眩しかった夕焼けが、どんどん沈んでゆく。地平線の下に潜り込んだ太陽は、空を柔らかく照らしていた。そして、朝になるとまた地平線の下から、太陽が顔を出す。これが、毎日繰り返される。生きるという事はこういう事か。

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「君はどうして此処にいるのかい?」と言っても通じる筈が無い。相手は猫だ。仕事終わりに帰宅すると、玄関前に居たのだ。首輪は無いようだ。掌に収まりそうな猫は、か細く鳴いた。怪我は無さそうだが、腹は減っていそうである。一人暮らしの男の部屋に、猫用のミルクなんて無かった。「どうするか。」

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君と会う日は、雨の日が多かったように思う。雨の日は、僕が傘を持っていく。駅の改札前で待ち合わせをしている。僕に気が付いた君は、嬉しそうに小走りでやってくる。この日は確か、映画館に行く予定だった。君が以前言っていた映画が公開されたらしい。駅から映画館までは、徒歩で五分程度だろうか。僕が傘をさすと、君はするりと僕の左側へと入る。雨の日はこうやって、ひとつの傘を分け合う様になって随分経った。君は嬉しそうに映画の話しをし、僕はそれに相槌を打ったり質問をしたりする。そうして映画館への道のりを、雨粒が傘に当たる音を聞きながら歩いて行く。お互い鞄や洋服が少し濡れはするが、それを気にした事は無かった。

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帰宅しベッドに倒れ込む。ぐるりと世界が反転する。嗚呼、この部屋はこんなにも平和だというのに、一歩出れば多過ぎる情報に翻弄されてしまう。テレビもつけず、携帯電話も鞄に入れっぱなしだ。時計の秒針の微かな音が聞こえる。平和でいられる時間を、カウントダウンされているようで少し怖くなった。

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数日の雨と曇りが続き、漸く晴れ間が覗いた。雲の隙間に太陽の光が差し込む。天使の階段だ。何処かで誰かに聞いた事がある。それが意味する事は忘れてしまったけれど。名前の響きだけは覚えていたのだ。溜まった洗濯物が一気に片付くのは、中々気分が良かった。今日の日和だと、洗濯物もよく乾くだろう。天使の階段、ふと口に出して呟く。もしかしたら、君はあの階段を降りてきて、手を振って戻ってきてくれるのではないか。くだらない空想だと分かっている。それでも、天使の階段という響きは空想を現実にしてくれそうな雰囲気があった。ひとつ溜息を吐き、現実に戻る。空想を掻き消すように、レースのカーテンを乱暴に引いて閉めた。

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朝焼けの時間が随分と早くなった。冬には未だ暗かった時間でも、周りを見通せる程になっている。こういう事で、季節の変化をしみじみと感じる。もうすぐ梅雨だとか、冬の冷えた空気だとか。自分はそういう事に感動する方では無い。一人でランニングをするこの時間を、彩る季節の変化は悪く無いと思う。

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