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1.
やってしまった。殺ってしまった。心臓を包丁で一突き、腹部を一突き。後は、覚えていない。血の海に横たわるあの人は、ぴくりとも動かない。どうしようか、早く処分をしないと。死後硬直が始まってしまう前に、処理しやすい様に姿勢を整える。私は冷静だった。
2.
やってしまった。殺ってしまった。心臓を包丁で一突き、腹部を一突き。後は、覚えていない。血の海に横たわるあの人は、ぴくりとも動かない。どうしようか、早く処分をしないと。死後硬直が始まってしまう前に、処理しやすい様に姿勢を整える。私は冷静だった。
2.
「他人の思考を盗み見るのは、止めておいた方がいい。」
そう言われて、たじろぐ。気付かれたのが、初めてだったからだ。俺には、生まれつきなのか知らないが、他人の思考を読む能力が備わっていた。その能力は、俺の人生に、多大なる影響を及ぼしている。
3.
私は桜の木として生まれた。長年この地に根付き、生き物や人々の生と死を見つめてきた。人生とは儚いものだ。私の花弁のように、ひと吹きされればすぐに飛んでいってしまう様に。毎年、私の足元に人々が集まり、賑やかに花見をするのは、私は嫌いじゃなかった。
4.
なんで野球を始めたのか、そんな切っ掛けは覚えていなかった。強いて言えば、父親と子供の頃にキャッチボールをよくしていたからだろうか。グローブの匂いも、軟式ボールの手に吸い付く感触も好きだった。生き物ではないのに、まるでボールは生きているようなのだ。
5.
同窓会の知らせが届いた。地元を離れて15年が経っていた。どうやって自分の住所を知ったのかしらないが、欠席に丸をつけた。地元には、もう5年帰っていない。親不孝だとも思うが、俺にはあの土地柄が合わないのだ。進学を機に逃げる様に東京へ出たのを思い出す。
6.
私達がここまで辿り着くのに、かなり紆余曲折あった。私は留学した。でも、彼は待っていてくれた。彼の仕事は、転勤が多い仕事だった。新幹線で会いに行った事もある。それでも私達に別れる選択肢は無かった。こうして今日、結婚をするという結論に辿り着いた。
7.
音楽を聴くと、過去を思い出すと聞いた。誰と聴いた曲だったか、どんな場所か、その時の事を思い出せると。歌手名も歌の名前も知らない、母がよく歌っていた歌を思い出す。夕飯の支度をしている時に、よく歌っていた。私は母の背中を見て宿題をした事を思い出す。
8.
古びたドアが開く音がし、床が軋む。古い割に手入れはされている様だ。もう、この館の主人は居ないというのに。一体誰が、何の為にこの館を手入れしているのだろう。埃一つ落ちていない床、太陽光を通す煌めく窓。しんと静まり返った中に、僅かな狂気が感じられた。
9.
父親の事を私は知らない。私がまだ幼い時に、女を作って出て行ったらしい。母は仕事を掛け持ちして、身を粉にして働いた。私は不自由なく育てられ好きな事を見つけ、大学も行けた。就職が決まった時、母は私よりも喜んでくれた。涙目でおめでとうと何度も言った。
10.
人間を消すというのは、大変な事である。数日もすれば、周囲の人間が騒ぎ出す。穏便に、消すにはどうしたらいいのか。失踪のふりをさせる?海外に行方をくらます?そんな事で上手くいくか?簡単だ。戸籍を売れば良い。欲しがる奴は、幾らでも居る世界があるんだ。
11.
幾ら気持ちを伝えても、何時も肩透かしを食らった気持ちになる。君には、何も響いてない。僕の言葉は、何処に行ってしまうのだろう。確かに目の前の君に、届けた筈なのに。ふわふわと、遠くへ行ってしまうのだ。僕は、何時になったら、君に伝えられるのだろう。
12.
あの日の彼女を助けられるなら、何だってやる。正に、そんな気持ちだった。俺は何もしてやれなかった。何もしないのは、見殺しにするのと同じ事だ。彼女は望んでいないかもしれないけど、その暗がりから俺が引き摺り出してやる。光が溢れる世界を、見せてやる。
13.
何でもない事でも、好きだなあと思う事がある。日の出の眩しさや、冬の空の高さや、桜の花弁が舞う様や、紅葉色に染まる山々。私はそういうものが好きだった。季節が変わると自覚出来る感覚が何よりも好きだった。私はいつ何処に行ってもそれは変わらなかった。
3.
私は桜の木として生まれた。長年この地に根付き、生き物や人々の生と死を見つめてきた。人生とは儚いものだ。私の花弁のように、ひと吹きされればすぐに飛んでいってしまう様に。毎年、私の足元に人々が集まり、賑やかに花見をするのは、私は嫌いじゃなかった。
4.
なんで野球を始めたのか、そんな切っ掛けは覚えていなかった。強いて言えば、父親と子供の頃にキャッチボールをよくしていたからだろうか。グローブの匂いも、軟式ボールの手に吸い付く感触も好きだった。生き物ではないのに、まるでボールは生きているようなのだ。
5.
同窓会の知らせが届いた。地元を離れて15年が経っていた。どうやって自分の住所を知ったのかしらないが、欠席に丸をつけた。地元には、もう5年帰っていない。親不孝だとも思うが、俺にはあの土地柄が合わないのだ。進学を機に逃げる様に東京へ出たのを思い出す。
6.
私達がここまで辿り着くのに、かなり紆余曲折あった。私は留学した。でも、彼は待っていてくれた。彼の仕事は、転勤が多い仕事だった。新幹線で会いに行った事もある。それでも私達に別れる選択肢は無かった。こうして今日、結婚をするという結論に辿り着いた。
7.
音楽を聴くと、過去を思い出すと聞いた。誰と聴いた曲だったか、どんな場所か、その時の事を思い出せると。歌手名も歌の名前も知らない、母がよく歌っていた歌を思い出す。夕飯の支度をしている時に、よく歌っていた。私は母の背中を見て宿題をした事を思い出す。
8.
古びたドアが開く音がし、床が軋む。古い割に手入れはされている様だ。もう、この館の主人は居ないというのに。一体誰が、何の為にこの館を手入れしているのだろう。埃一つ落ちていない床、太陽光を通す煌めく窓。しんと静まり返った中に、僅かな狂気が感じられた。
9.
父親の事を私は知らない。私がまだ幼い時に、女を作って出て行ったらしい。母は仕事を掛け持ちして、身を粉にして働いた。私は不自由なく育てられ好きな事を見つけ、大学も行けた。就職が決まった時、母は私よりも喜んでくれた。涙目でおめでとうと何度も言った。
10.
人間を消すというのは、大変な事である。数日もすれば、周囲の人間が騒ぎ出す。穏便に、消すにはどうしたらいいのか。失踪のふりをさせる?海外に行方をくらます?そんな事で上手くいくか?簡単だ。戸籍を売れば良い。欲しがる奴は、幾らでも居る世界があるんだ。
11.
幾ら気持ちを伝えても、何時も肩透かしを食らった気持ちになる。君には、何も響いてない。僕の言葉は、何処に行ってしまうのだろう。確かに目の前の君に、届けた筈なのに。ふわふわと、遠くへ行ってしまうのだ。僕は、何時になったら、君に伝えられるのだろう。
12.
あの日の彼女を助けられるなら、何だってやる。正に、そんな気持ちだった。俺は何もしてやれなかった。何もしないのは、見殺しにするのと同じ事だ。彼女は望んでいないかもしれないけど、その暗がりから俺が引き摺り出してやる。光が溢れる世界を、見せてやる。
13.
何でもない事でも、好きだなあと思う事がある。日の出の眩しさや、冬の空の高さや、桜の花弁が舞う様や、紅葉色に染まる山々。私はそういうものが好きだった。季節が変わると自覚出来る感覚が何よりも好きだった。私はいつ何処に行ってもそれは変わらなかった。
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