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機械的な電子音が鳴り響き、目を覚ました。ああ、もうこんな時間か。起きなくては。のろりと起き上がり、ひとつ伸びをする。嗚呼、今日からまた一週間が始まる。先週のあれこれをどうしようか、など仕事の事を考えている。
「おはよう。」
ふわり、とした君の声に隣を見る。寝ぼけ眼の君は、大きな欠伸をひとつ。どんなに遅く寝ても、君は僕と同じ時間に起きる。
「寝てて良いよ。」
身支度を整えながら、君にそう声を掛ける。
「うんー。」
そう言いながらも君はテレビのスイッチを入れて、天気予報を見ている。
「雨は大丈夫みたいだよ。ただ、凄く暑そう…。」
心配そうな様子で、君は此方を振り返る。ゆるりとしたTシャツの襟元から、鎖骨が見える。
「大丈夫、気をつけるから。」
君の頭をくしゃり、と撫でると。うふふ、と嬉しそうに笑う。さて、そろそろ家を出なければならぬ。
「それじゃあ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。気を付けて。」
君は玄関先までついてきて、小さく手を振る。ドアを閉めて、鍵を掛ける。大事な君が誰かに取られないように、念入りに確認する。
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窓辺に吊るした風鈴は涼し気な音を立てている。その向こうには、入道雲が見える。何もしたくないなあ。ぼんやりと頬杖をついて、メモ帳を何ページか捲る。好きなフレーズや、使えそうな表現を自分なりに纏めたものだ。私の宝物と言っても良いだろう。作業机に乱雑に置かれた資料から、一枚の紙を見つけ出した。
「花火大会…。」
去年のじゃないよなあと、訝し気にチラシの内容を確認する。どうやら今夜この近くで行われるようだった。こんな事なら、君を誘っておけば良かった。
「ごめんくださーい。先生、いますか?」
がらりと引き戸が開く音がして、玄関から君の声がした。
「はーい。上がっておいで。」
「はーい。」
君はいつもの様に、迷わず書斎へやってきた。
「先生、花火大会行きましょうよ。」
どうやら先程のチラシを、君も見ていたようだ。
「うん、良いね。誘いに行こうかと思っていたところだよ。」
「良かったです。擦れ違いにならなくて。」
君は浴衣姿で、何だか嬉しそうだ。浴衣は紺地に朝顔の模様のものだった。纏めた髪の毛についているかんざしは、涼しげな青色をしている。
「似合っているね、いい色だ。」
「有難う御座います。」
家からでも見られるが、折角だから出店もある場所へ行ってみようかと思った。
「出店でも冷やかして、それから花火を見ようか。」
「いいですね。私、りんご飴食べたいです。」
君はそう言って早く行こうと私の手を引っ張る。
「はいはい、じゃあ行こうかね。」
私もとうとう重い腰を上げて、玄関へと向かう。せっかちな君はもう下駄を履き終えていた。
「さて、行こうか。」
「はい!」
二人で下駄をカラコロと鳴らしながら、河川敷へと向かう事にした。
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