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『あなたの名前は?』
困り果てて神社のベンチに座っていた麗花は突如話し掛けられ、慌てて顔を上げた。
目の前を浮遊しているのは、人の形をしているが人よりも遥かに小さい姿をしている。
「妖精?」
『惜しいですね、私は式神の睡蓮(すいれん)です。後にご主人がやってきます。』
急に現れた式神に、麗花は動転していた。
以前も不思議な人物に会ったが、ここまで小さくは無かったのだ。
『あなたの名前は…?』
睡蓮はもう一度優しく、麗花に語りかけた。
「あ、ごめんなさい…。澤野麗花(さわのれいか)です。」
地面に枝で麗花は自分の名前を書いた。
『どうもありがとうございます。』
睡蓮は何かを小さな札に書き付けている。
その札に書かれている文字を、麗花は読む事が出来なかった。
『この札を持っていて下さい。』
そこには、麗花の名前と何か呪文の様なものが書かれている。
「これは?」
『これを持っていて頂くと、あなたの姿を一時的に御隠しすることができます。』
「はい。」
『つまり、私のご主人が此方に辿り着く迄の間に、誰かに見つかっては、困るので…。』
そう言って睡蓮は、少し困ったように笑った。真っ赤な光の中、睡蓮の銀髪がきらきらと光る。
「あ、そうですよね!」
誰も居ないと思いこんでいた麗花は、急に怖くなった。
現れるそれが、敵なのか味方なのかも分からない場所というのは恐ろしくてならない。
『ただ、あなたが言葉を発してしまうと効果が切れてしまいます。』
「…分かりました。」
麗花はしっかりと頷いた。
ここまで手を尽くしてくれている人がいるのだから、せめて自分に出来る事をしっかりとしなければ。
『何を見ても、驚かないで下さいね。此処は、妖(あやかし)の世界ですから。』
そう言って睡蓮は、札を麗花に手渡した。
麗花は手が震えるのを押さえられなかった。
『大丈夫です。私も一緒に居ますから。』
怯えている麗花の頬にそっと触れて、睡蓮はそう言う。
麗花は、頷いてベンチに座って境内の階段を見つめた。
*
「反転した者の名は、澤野麗花だそうよ。」
「反転した者の名は、澤野麗花だそうよ。」
「何?またかよ…。」
以前、境内の階段で反転してきた少女の名前だ。
狐浄はそれを思い出したが、結界を破られた原因はまだ分かりそうに無かった。
「あれ、お馴染みの子なの?」
凛孤は孤浄の様子を見て、何やら気になったようだ。
「前の新月に反転してきた。階段気を付けろって言ったのに、アイツは。」
孤浄は舌打ちをすると、足を早める。
「なるほどね。体質的に、こちらに来やすいのかしら。」
凛孤は反転しやすい体質や家系は、僅かながら存在していると知っていた。
日々、孤幻の守の連絡係として動いている立場上、知りえる事実だった。
なので、他言無用の事柄であり、この事は孤浄はまだ知りえない事であった。
「そんな体質あるのかよ、勘弁してくれ。せめて、他の神社に行ってくれ。」
「まあまあ、落ち着きなさいって。睡蓮が言うには、言う事聞いて札持っていてくれているみたいだし。大丈夫よ。」
そうして、凛孤は孤浄を宥めながら二人は神社へと向かっていた。
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