roika_works 【宴は満月の夜に】ほつれる糸 忍者ブログ
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「誰かが結界を破ってるとしか、思えないな。」
「そんなまさか。人間に可能なのでしょうか。」
昨日、反転した人間がいたという事で、この地区を纏める区長へ狐浄は、報告と今後の対策について話をする為、地区で一番大きな神社へと訪れていた。
此処の地区を治める、最も力が強い稲荷である。名を狐幻の守(こげんのかみ)という。
狐浄は驚いた。結界が破られたら、自分が一番に気が付く筈だ。
一度破った結界を、元通りにしてその存在を消す事は並大抵の事では無い。
「此方の対策がまるで相手に筒抜けになっている様なのです。」
「成る程。反転してきた人間の特徴も接点が無いとなると。対策が後手後手になってしまうな。」
「今、正にその状況でして…。」
「反転した人間についてもう一度確認してみなさい。その者達が住まう家に、何かあるのかもしれない。後は何処の結界が破られたかだ。人間が現れた場所に、札を貼り其処の結界を強化して、様子を見よう。」
「はい、かしこまりました。」
狐浄は深く礼をし、狐幻の守の神社を後にした。
意見を貰った通り、人間が反転して現れた階段、境内の木等に札を貼り其処の結界を更に強化した。
「こんなもんかな…。」
その後は、報告書とは別に狐浄自身が記録をつけている、巻物に目を通す。
古地図と照らし合わせて、反転した人間の家がある土地柄や家系についても、細かく調べる必要がある。
これは難儀な作業だ。
しかし、これ以上人間が反転しない様にする為には必須の作業である。
狐浄は、巻物と古地図を畳の上に広げて、見落としが無いかを丁寧に確認していく。

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