roika_works 【宴は満月の夜に】思い出すのは無音の世界 忍者ブログ
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麗花(れいか)はこの間体験した不思議な事象を、親友である山野響子(やまのきょうこ)に話をした。
「神隠し…とは、また違うよね。」
一連の話を聞いた響子は、ぽつりと呟いた。一般的に言われている神隠しと、麗花が体験した話は似通った点もある。
しかし、神隠しとは、また少し話が違うのだ。
「誰だったんだろうね、その人。」
「分からない…。元に戻ったと思ったら、一瞬で消えちゃって。」
うーん、と響子は眉間に皺を寄せて考え込む。麗花は、此処ではない何処かで会った人物を、思い出していた。
人間と似た様な容姿をしていたが、それは仮の姿なのかもしれない。
響子は何かを思いついた様で、麗花の顔を見た。
「今度、一緒に行ってみよう。」
「え!?」
「駄目かなあ…。」
「ちょっと、怖くない…?」
まさか、こんな展開になるとは麗花も思っていなかった。此処ではない何処かへ、一緒に行けるのかどうかさえ分からないというのに。
もしあの人が居なければ、此方の世界へ戻ってくる方法すら、分からない。
麗花は喉元からひんやりとした水を流し込まれた様に、血の気が引くのを感じた。
「戻って来られるか、分からないんだよ…?」
「それは…。そうだけど。」
もごもごと響子は口ごもった。それでも、行きたいという意思が伝わってくる。
「しょうがないなあ…。行って何も無かったら、すぐ帰ろう。それなら、良いよ。」
「やった、ありがとう。」
響子は嬉しそうに笑ったが、麗花は心配で仕方なかった。


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