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怒った顔や声を荒げる様を見たことが今まで無かった。喜怒哀楽の怒以外の感情が伝わってくることから考えて、特別に感情表現が苦手ではないようだし感情の起伏が極端に少ない訳ではないらしい。どちらかと言えば自分の方が、感情表現が苦手といえよう。そこそこに汚れて帰った時も、怒ることはなかった。何処へ行くかも何をしに行くかも告げずに、ふらりと出て行き血塗れになった自分を見て驚きこそしていたようだが。一通り手当てやら終えた後、悲しそうな寂しそうな目をしてただ一言「あまり、危ないことはしないで下さいね。あなたは平気でも、私は心配なんです。」独り言のようでもあり、懇願されているようでもあったそれに自分は何と答えただろうか。大抵の怪我が1日あれば治る自分の、何を心配する必要があるのか分からなかった。他の人間に比べて治癒力が異常に高いことは、もう気付いているだろう。それでも、困ったような泣きそうな顔で「心配なんです。」と小さな声で呟く。大丈夫だと言ったところで、ただの気休めだ。許容量を超えるような怪我を負った場合、どうなるか自分でさえ分からない。自分を制御しているものが外れてしまうかもしれない。飛躍的な能力を得る代わりに、その間の記憶は自分には殆ど無いのだ。何をしているのか、何をしてしまったのか、誰を壊したのか、後処理の報告で知ることの方が多かった。「ちゃんと帰ってこないと、怒ります。」珍しく意思をはっきり感じさせる声色だった。嗚呼、これが帰る場所というものかとハッとする。 いつの間に自分には勿体無い、温かな空間が出来ていたのだろうと少しと戸惑っていた。こんな空間は、生まれてから持ったことが無かったのだ。何も言わない自分に対して、相手は責めもしなかった。「私はいつでもずっと、待っていますから。」先程とは比べてにこりと微笑んだ目元は僅かに朱を帯びていた。
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