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貴方は私のことを、勿体無いほどに大切にして下さいます。私は、料理も裁縫も茶もせいぜい、人並み程度です。それでも貴方が褒めて下さると、私は恥ずかしい気持ちもありますが嬉しさの方が大きく勝るのです。「ほら、見ろ。雪だぞ。」ふと縁側で新聞を広げている貴方を見やると、その先にはちらりちらりと音もなく雪が舞っている。積りはしないかもしれないが、寒さに用心することはない。「貴方、これを羽織りなさいな。風邪を引いてしまうわ。」紺色の半纏を手渡すと、俺は丈夫な方だけどなあとぼやく声が聞こえた。空はどんよりとしては居るが、日の光が僅かに透けている。その様は見ていて絵になるようだとも思った。「貴方、囲炉裏は如何ですか?」何度目かの、薄い緑茶を湯飲みに注ぎながら尋ねると。うーん、と伸びをした。「そうだな、囲炉裏から見る縁側も乙であろうね。」と、広げた新聞と湯飲みを持ってのそりのそりと囲炉裏の側へと移っていく。「冬はいいね。」と少し猫背の貴方は言う。「何がですか?」と私は問う。家事をする身からすれば、暖かい方が断然好きな訳だが。「君が、僕にあれこれ世話を焼いてくれる。僕はそれが好きなんだ。君と沢山話せるじゃないか。」と貴方は恥ずかしげもなくそう言うのです。私は自分の顔が紅潮していくのが分かり、少し顔を背けながら自分の小さい湯飲みに茶を淹れて誤魔化した。
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