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「どうぞごゆっくり。」
冗談めいてそう言った先輩は、ひらひらと手を振った。
(なんだか、不思議な人だな。もっと無口な人かと思った。)
言われた通りの場所にあるバスタオルを取り、借り物の服と共に籠に置く。
人の家の風呂に入るというのは、何年振りのことだろうか。
以前、友人の家に泊まった時以来だ。
少なくとも数年は前のことだ。
蛇口を捻り、シャワーを浴びる。
酔いが徐々に醒めていくのを感じた。
早めに風呂を終えて、服を着替える。
洗面所の鏡に映る自分は、貧相に見えた。
やはり、上背のない自分には服のサイズが幾らか大きいようだった。
筋トレするかなあなどと、ぼんやり考えながらリビングに戻った。
「戻りましたー。バスタオルは洗濯機の横に掛けて置きました。」
「おかえりー。ちょっと、服大きかったけど寝るだけだし良い?」
「あ、はい。大丈夫です。」
なんとなく、気恥ずかしい。
先輩の方が背が高いのだから、当たり前のことなのだが。
「じゃあ、僕も行ってこようかな。」
よいしょ、と言って立ち上がった先輩を見送る。
「はい。」
ふう、と溜息が洩れる。
酔いが醒めてきたので、とんでもない流れになったなと今になって思った。
(終電で帰る予定だったんだけどなあ…。)
テーブルに突っ伏して、壁掛け時計を見上げる。深夜2時過ぎだ。
先輩と仲良くなるのは嫌なことじゃないし、むしろ嬉しいところだ。
急に泊まってしまったことは申し訳なかったな、と思った。
そういえば、自分はいつから先輩のことを下の名前で呼んでいたのだろう。
今更元に戻しにくいではないか…。
そうしてとりとめなく考え事をしていたら、先輩が戻って来た。
「さっぱりしたー。」
「おかえりなさい。」
黒のシャツにグレーのスウェットを着ていた。
こういったラフな格好を見るのも初めてで、なんだか物珍しく感じられる。
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