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唇が触れた部分が、じわじわと熱を持つような心地がする。
「ごめんね、疲れているだろうに。ゆっくり寝ていいよ。」
「あ、いえ、こちらこそすみません。」
「それじゃあ、おやすみ。」
「おやすみなさい…。」
左手で、さらさらと頭を撫でられた。
こんな風に誰かにされたのは、いつの事だろう。
優しい掌は、壊れ物を扱うかの様だ。
互いに手は繋いだまま、その日は眠る事になった。
いつの間にか眠ってしまっていた。
早朝に目が覚めて、ふと隣を見る。
静かに寝息を立てている先輩は、少し幼く見える。
気が付くと、繋がれていた手が解かれていた。
そっと自分から指を絡ませた。
何故自分がそうしたか、分からない。
そのまま、手を解いたままでも良かったはずなのだ。
理由を説明しろと言われても出来ない。
それでも、何故かそうしないといけない気がした。
「…寝られない?」
少し寝惚けた声が隣からした。
「ごめんなさい。起こしちゃいましたね。」
「ん、大丈夫。」
そう言って、指先をぎゅっと握られた。
自分でしておいたのに、何故か恥ずかしかった。
そして、空いている手で、先輩に抱きしめられた。
思考が一気に止まる。
「翔(かける)先輩…、あの。」
「嫌だったら止めるよ。」
声がすぐ側で聞こえる。
不思議なことに緊張はするが、嫌ではなかった。
心臓の音が、とくとくと聞こえる。
ゆっくりとした呼吸音さえも聞こえた。
「嫌じゃない、です。」
「ん、分かった。」
後頭部をゆっくり撫でられる。
その手は温かくて心地よい。
「たまに、人肌恋しい時があるだろう?」
「ええ。そうですね。」
「こうしていたら、少しは良いかなと思ってね。僕にとっても、竜也(たつや)くんにとっても。」
「僕は翔(かける)先輩以外とは、こういう事したくないなって思うんです。何故だか分からないんですけど。」
そう言うと、頭をぽんぽんと優しく撫でられる。
「今のは、中々の殺し文句だよ。」
そう言って苦笑した先輩の声がすぐ側で、優しく響く。
「え…?あ!色々すみません!」
自分が言った言葉を反芻してみると、無意識のうちにとんでもないことを言ってしまったと自覚した。
恥ずかしいどころの話ではない。穴があったら入りたいという気持ちになった。
まともに先輩の顔を見られないまま、慌てて謝った。
子供をあやすように、背中を撫でられる。
「竜也(たつや)くんは、天然だなあと思っていたけど本物の天然だねえ。僕の目に狂いは無かったようだ。」
「ははは…。」
最早どう弁明したらいいのかも分からずに、ただただ苦笑いしか出来なかった。
「まあ、そういうところも竜也(たつや)くんらしくて、僕は好きだよ。」
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