roika_works 【毒薬を飲み干したら】繋いだ手を離さずに 忍者ブログ
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会社の先輩×後輩のほんのりBLなので、ご注意下さい。

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布団の中で先輩と手を繋ぐ、という考えたこともない事態にただただ緊張するばかりである。
緊張しなくて良いと言われても、元々が緊張しやすい性分なのだから仕方がないのだ。
「翔(かける)先輩。」
「ん?」
優しい返事が、自分のすぐ側から聞こえてきて改めて驚く。
そりゃあ、同じ布団に入っているのだから当たり前なのだが。
どうにも慣れない。
こんなことで、寝られるのだろうか?
「先輩は、何で僕を呼んでくれたんですか?」
これが1番の疑問だった。
自分と同じ代の社員は、他にもいる。
何故、自分のことを気にかけてくれているのか、分からなかったのだ。
気にかけて貰えるのは、とても有難いことだけれど。
「そうだね。竜也(たつや)くんが新人の時、僕がついてたじゃない?だからかな。今でも気にしてしまうのは。」
「そうだったんですね…。もう、あの時は本当迷惑掛けてばかりで。」
「いやいや、いいんだよ。竜也(たつや)くん見ているの楽しかったし。」
隣で思い出し笑いをしている先輩を見て、当時の使えないポンコツな自分を思い出して恥ずかしくなった。
今でもポンコツではないとは、言えないが…。
「僕が別の部署になっても、何度か話し掛けに来て下さったの、嬉しかったです。」
「お、本当?良かったよ。」
そう言って指先を絡め取られ、繋いでいる手のことを忘れていたことに気が付く。
「部署が別だから、なかなかちょっかい掛けに行けなくてね~。」
「あはは…。」
そう言われると手放しで喜んでいいのか、気になるところではある。
だが、そうして気にかけていてくれたのは、本当に有難いことだ。
「僕、一人っ子だから、弟が出来たみたいで嬉しかったのだよ。」
「あ、そうなんですね。」
繋いだ手の温度は同じになり、当初感じていた違和感もなくなってきた。
不思議なものである。
「竜也(たつや)くんは、お姉さんがいるんだっけ?」
「はい、歳は離れてますが…。」
「末っ子で甘え下手なのはそれでか。」
何か納得したようで先輩はふむふむと頷いている。
「竜也(たつや)くんは、優しいね。普通、こんなことしてくれないよ。」
「そ、そうですか…。」
繋いだ手を両手で包み込み、そう言われた。
優しいのか、としみじみ考える。
「ありがとうね。」
「いえ、僕は何も…。」
そう返すと目元が、にこりと笑う。
「全く竜也(たつや)くんは、控えめだな。そういうところ、嫌いじゃないよ。」
目を伏せて、そっと手に唇を寄せられた。
驚いて声も出なかった。
「ごめん、驚かせたね。」
「いえ…。」
そっと手に触れた唇は、ほのかに温かく心地よい柔らかさがあった。
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