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草木が枯れ、雪がしんしんと降り積もる冬には生きる希望を見出しやすい。次に来るのが春だからだろうか。その時が来るまで耐え忍ぶということが出来そうな心持ちである。夏はどうだろう。眩しい太陽に青々とした草木に虫の声。そのどれもに死が隣り合っている気がする。次に来るのが秋だからだろうか。

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褒められ慣れない。貰った言葉にひとしきり喜んで、その後の言葉の置き場に困ってしまう。気を遣って言ってくれたのではないか、世辞を間に受けてしまったのではないか。後々になってそういったことを、気にしてしまう。自信が持てないということが根底にあるような気がする。褒められるのは緊張する。

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たくさんの幸せというものは不安になる。いずれ悲しく辛い出来事というものがやってくるのではと心配になる。身の丈に余る幸せは、向いていない。不幸になりたい訳ではないが、自分には幸せというものが向いていないように感じる。幸せはすりきり1杯ほどで良い。遠くから見る幸せに焦がれる方が良い。

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ぽかんと空を見上げる。雲がない。すっきりとよく晴れている。気持ちが晴れやかかと問われれば、そうではない。焦燥感と不安ばかりが降り積もる。行く当てなどないのに、駆け出してしまいそうになる。生きる理由だなんて立派なものを見つけられていないが、死ぬ理由というのも見つけられていないのだ。

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『絆の結び方』
・1章 はじまり_05

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 「おやすみなさい」
 クレアは眠たそうな声で、ショーンに返事をします。ショーンが声をかけて、部屋を出る頃にはクレアの大きな目はうとうととしていました。キッチンで大きなマグカップにミルクティーを作ったショーンは、書斎へと入って行きました。買ってからなかなか読むタイミングのなかった本を、読もうとしているようです。表紙は難しい言葉で書かれています。こうしてショーンは毎日、丑三つ時になるまで本を読んで過ごしていました。人間に変身するための薬は、一日に一度変身が解けたときに飲まなければいけません。そのため、ショーンの書斎には夜遅くなってもランプの灯りが煌々と点いているのでした。本を半分ほど読み終えた頃、窓がしまった書斎でショーンの前髪が靡きました。いよいよ、変身が解ける時間が来たようです。
「さて、時間か」
 ショーンは書斎の鍵をかけ、一つ溜息を吐きます。万が一、クレアが起きてしまっては大変です。変身が解けて人間から元の黒獣(こくじゅう)に戻るときには、少なからず体力を消費します。ゆらゆらと揺れる影は、少しずつ姿を変えていきます。大きな耳、鋭い牙、赤い瞳、ナイフの様な爪、どれもが昼間のショーンの姿からは想像ができないものです。ショーンは、大きな黒い爪で器用に粉薬の包みを破いて薬をガブリと飲み込みました。決して美味しい薬ではありません。しかし、これを飲まなければ今までの平和な暮らしができなくなってしまいます。ショーンは、ただただ静かに平和に暮らしたいのでした。
 薬を飲んで人間に変身するのも、無闇に人間を襲ってしまうことのないようにするためです。ショーンは自分が人間を襲ってしまうことを、恐れていました。自分のそういった残虐な一面を、薬で人間に変身するということで打ち消そうとしているのです。ショーンは自分が忌み嫌われる、黒獣であることを理解していました。しかし、ショーンは人間を嫌うことはしません。果たしてそれは何故でしょうか。
 薬を飲んでしばらくすると、ショーンは人間の姿へと変身が終わりました。ほうっとひとつ、深い溜息を吐いたショーンは椅子に深く腰掛けました。マグカップに入っていたミルクティーはすっかり冷めてしまっています。ショーンはいつまで、この秘密を一人で抱えていくのでしょうか。
 今はクレアに秘密にすることができていますが、いつまで秘密にしていられるかは分かりません。秘密がばれてしまうのは、明日かもしれないですし一年後かもしれません。ずっと秘密にしていられるという訳ではないということは、ショーンも理解していました。では、何故ショーンは人間の少女であるクレアを引き取ることにしたのでしょう。ただ、自分が寂しいからとかそういった理由ではないようです。その理由をお話しするには、今よりずっと昔の出来事を、思い出さなくてはなりません。
 それは、世界がまだ混沌に満ち溢れ悪が蔓延り、後に暗黒の時代と呼ばれるようになった時代のことです。ショーンがクレアと出会う、うんと前の時代です。

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『絆の結び方』
・1章 はじまり_04

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 「じゃあ、いただきます」
「いただきます!」
 クレアは元気よくそう言うと、サケのムニエルを食べ始めました。バターの香りが食欲をそそります。サラダにかかった、オリーブオイルベースのドレッシングも美味しいです。このドレッシングは、ショーンのお手製のものです。
「おいしい」
「よかった、よかった」
 ニコニコと笑って食べるクレアを見て、ショーンはホッとしました。こうやっている様子を見れば、歳相応の女の子です。ただ、クレアには様々な教育を施さなければなりません。読み書きがまだできないクレアには、読み書きを教えていかなければいけません。一人前の人間として生きていくためには、せめて読み書きができないと難しいでしょう。これから少しずつ、ショーンはクレアに教えていこうと思っています。二人でゆっくりと夕ご飯を食べて、クレアは一人でお風呂に入っていました。猫足のバスタブの中は、白い泡で覆われています。クレアはこうして泡風呂で遊ぶのが、一日の中でも楽しみな時間でした。ふわふわとした泡は、湯船の表面が見えないほどたくさんあります。シャワーを浴びて、泡を流してからクレアはパジャマに着替えました。少し厚手のパジャマは、肌寒い秋の日にぴったりです。
「ショーン、お風呂おわった」
 クレアはリビングへと戻り、本を読んでいるショーンに声をかけました。ミルクティーを飲みながら、難しそうな分厚い本を読んでいます。
「ああ、さっぱりしたかい?」
「うん」
「じゃあ、このジュースをどうぞ。私も風呂に入ってこよう」
 ショーンは、テーブルにオレンジジュースの入ったコップを置いていきました。クレアはオレンジジュースを飲みながら、静かなリビングをぐるりと見回します。花瓶が置かれたテーブルには、キャンドルがいくつか乗っています。ミルクのような色をしたキャンドルたちは、火がついていないととても静かです。リビングにも本棚があります。そこには、料理の本が入っていました。ショーンは、自分で料理をすることが好きなようです。クレアは一冊の本を取り出しました。字は難しくて読めませんが、料理の挿絵がたくさんある本は見ていて飽きることがありません。クレアがオレンジジュースを飲み終わる頃に、ショーンは戻ってきました。
「おや、本を見ていたのかい?」
「うん。これ」
 クレアは本の表紙を、ショーンに見せました。ショーンは髪の毛をタオルで拭きながら、クレアが見せた表紙を見ます。
「なるほど。『おいしいおかしの作り方』か。最近作っていなかったな」
「おかし? ショーン作れるの?」
「まあ、簡単なものだけれどね」
「作る? お手伝いする」
 クレアは目をきらきらと輝かせて、ショーンに話しかけます。それに、流石のショーンもまいったようで、困ったなあと笑いました。
「じゃあ、明日はクレアのエプロンを買った後に、おかしを作ろう」
「うん!」
 クレアは嬉しそうにそう言うと、手に持っていた本のページを再びめくり始めました。一体ショーンはどんなおかしを作ってくれるのでしょうか。クレアは楽しみで仕方ありませんでした。寝る前にはショーンが作ってくれた、ハチミツ入りのホットミルクを飲みます。ホットミルクを飲むと身体がぽかぽかとして寒さを消してくれます。ショーンはミルクたっぷりなミルクティーがお気に入りのようです。
「さあ、クレア。そろそろ寝る時間だよ」
 しばらくのんびりとしていましたが、時計の針が九時を回るころになるとショーンはクレアの寝支度をさせます。今日は掃除に散歩に、クレアも疲れていると思ったからです。
「うん」
 クレアは素直に頷いて、歯磨きをして寝支度を整えました。後は、ベッドに入るだけです。
「今日はこの絵本を読もうか」
 今日ショーンの部屋からクレアの部屋へ移した絵本のうちの一冊を、ショーンは持っていました。絵本の表紙は、飾り枠で囲われておりタイトルがきらきらとしたインクで印刷されています。まるで、夜空に星をこぼしたかのようです。
「なんの絵本?」
「今日は『カップケーキの友達探し』を読もう」
「おいしそうな名前」
「そうかい?」
 ショーンは、クレアに絵本を読み聞かせます。絵本に描かれている絵は、どれもふわふわとして砂糖菓子のようです。足の生えたカップケーキが、自分の頭に乗せるトッピングを探しに行く物語でした。色々なケーキが出てきて、目にも楽しい絵本です。カップケーキは最後には甘酸っぱいラズベリーを選んで頭に乗せました。これがショートケーキだったらきっとイチゴだったことでしょう。ココア生地のカップケーキには、甘酸っぱいラズベリーがぴったりでした。クレアは絵本の絵を見ながら、ページをぱらぱらと捲っていきます。
「カップケーキは、ラズベリーと幸せになれたのかな」
 クレアはぽつりと呟きました。めでたし、めでたしで終わった物語でしたが、選ばれなかったブルーベリーやチェリーのことを考えるとさみしい気持ちになります。
「きっと、幸せになったと思うよ」
「ブルーベリーとチェリーは?」
「他のケーキが選んでくれるはずさ」
「そっかあ」
 クレアはフルーツタルトやチーズケーキが、ブルーベリーとチェリーを幸せにしてくれたら良いのにと小さな溜息をつきました。ショーンはクレアの頭を撫でて、大丈夫だよと慰めました。
「ブルーベリーもチェリーも、誰かに選ばれるときを待っているのさ」
「そうなの?」
「クレアはどうだい?」
「え?」
 ショーンの言葉にクレアは目をぱちくりとさせました。
「クレアも、誰かに選ばれるときを待っていたのではないかい?」
「あ……」
 そこでクレアは闇市での生活を思い出しました。誰も身体の小さなクレアを選んでくれませんでした。同じ時期に商人の元に集まった子供たちは、とうに売れてしまってクレアは寂しい思いをしていました。やはり身体が小さい自分では、誰の役にも立てないのだとクレアは落ち込みました。しかし、そこにショーンが現れたのです。たまたま一人で残っていたクレアを、ショーンは買い取りました。金貨五枚というのは、決して安いお金ではありません。
「そうだった」
 クレアはほんの数日前の自分のことを思い出します。わずかな希望を持って、誰かが選んでくれるかもしれないとずっと待っていたのです。もしかしたら、絵本に出てきたブルーベリーやチェリーも同じ気持ちだったかもしれません。
「だからきっと、ラズベリーもチェリーも大丈夫。選んでくれる相手がいるよ」
 ショーンのその言葉に、クレアはホッとしました。誰も選んでくれないまま、終わりのない時間を過ごすことはとても悲しいことだからです。
「うん、そうだね」
 納得した様子でクレアは、ふわふわの毛布を首元まで引き上げました。絵本のページを捲っていた指は、いつの間にか止まっています。ランプの灯りを小さくし、ショーンはクレアのベッドから立ち上がりました。
「おやすみ、クレア」
 柔らかく淡い金髪を撫でて、ベッドサイドにあるランプの灯りをショーンは落としました。柔らかなオレンジ色に満たされていた部屋は、青く黒い夜の色にとって変わりました。

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『絆の結び方』
・1章 はじまり_03

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 「これ、何て書いてあるの?」
 クレアは一冊の図鑑の表紙をショーンに見せました。脚立で上の棚の本棚を見ていたショーンは、目を細めてその表紙の文字を読みます。
「どれ……。『光のいきものと闇のいきもの』だね」
「ひかりとやみ?」
 クレアはいきものに、そういった分け方があるのを知りませんでした。もちろん、闇市には不思議な人はたくさんいました。普通の人間とは違う彼らのことを、光と闇で分けられることが少しだけ不思議です。クレアは自分がその図鑑に載っていないのは、ただの人間だからだと思いました。
「少し難しいかな……。今度読んでみるかい?」
「でも、字が読めないの」
 小さい声でクレアはしょんぼりと呟きました。しかし、ショーンはそれを全く気にしていない様子です。
「いいかい、クレア。出来ないことは恥ずかしいことじゃない」
「うん」
「字が読めなければ、一緒に練習しよう」
「わかった」
 ショーンはクレアの頭を撫でました。しょんぼりとしていましたが、クレアは元気な気持ちを取り戻しました。クレアはできないことが、まだまだたくさんあります。ナイフとフォークはまだ難しいですし、料理も難しいです。ですが、クレアは何もできないということではありません。それをショーンは分かっているようでした。
 クレアが選んだ絵本と図鑑を、二人でクレアの部屋へ運びました。クレアの部屋には背の低い本棚がありましたが中身は入っていません。そこに、図鑑と絵本を次々としまっていきます。全ての本をしまうと、空っぽだった本棚は色とりどりの背表紙に彩られていました。さて、本の片付けが一段落しました。ショーンは読まなくなった本をいくつか束ねて紐で縛りました。この本は古本として、後で売るそうです。
「さて、クレア。少し近所を散歩しようか」
「うん!」
 二人は折角なので、近所を散歩することにしました。クレアはショーンが昨日買ってくれたこげ茶色のワンピースと黒い靴に着替えました。昨日まで着ていた服は、ぼろぼろだったのでショーンが新しい服をいくつか買ってくれたのです。晴れていると街並みは昨日と違って見えました。石畳の道にレンガ造りの家が並んでいます。どの家も玄関先に小さな植木鉢で花を育てていました。ある家は赤い花、ある家は黄色い花、色も形も様々です。歩道に植えられている街路樹は、黄色く色づいています。
「きれいだね」
「ああ、イチョウは今が見ごろだね」
 ショーンは背の高いイチョウの木を見ているクレアの手を取り、歩みを進めていきます。クレアは手を引かれるまま、のんびりとした歩調でショーンの後ろをついていきます。クレアの小さな手には、いつの間にかイチョウの黄色い葉が握られていました。近所を散歩していると、ショーンに声をかける人がいました。
「あら、ショーン。ごきげんよう。可愛いお嬢さんね」
「メアリー、こんにちは。クレア、こちらはミセス・メアリーだよ」
「こんにちは、クレアです」
 クレアは緊張しながらも、ぺこりと頭を下げて挨拶をしました。ミセス・メアリーは、クレアを見てにっこりと微笑みました。
「きちんとご挨拶できてえらいわね。私はメアリーよ、どうぞよろしく」
「この間は、リンゴをどうもありがとう。今度紅茶の茶葉を買いにまた伺うよ」
「まあ、ありがとう。そのときには、クレアに合う紅茶も用意させてもらうわ」
「ああ、どうもありがとう」
「いえいえ。では、またね」
 ミセス・メアリーは、紅茶の香りを残して去っていきました。ショーンの話によれば、ミセス・メアリーは近所のカフェの人だそうです。ご主人とともに、カフェを切り盛りしているそうです。どんな素敵なカフェだろうと、クレアの想像は膨らむばかりです。二人はしばらくの間近所を散歩して、公園に寄り道をすることにしました。ブランコに乗ったクレアは、ぐんぐんとブランコをこいでいます。ブランコが前後するたびに、クレアの淡い金髪がゆらゆらと揺れています。ショーンはクレアが持っていたイチョウの葉を預かっていました。ショーンのてのひらに収まる小さいサイズのイチョウの葉ですが、クレアの手には大きいイチョウの葉です。クレアはそれが気に入ったようで、家に持って帰ると言って喜んでいます。
「さあ、クレア。そろそろ家へ戻ろうか」
「うん!」
 クレアは乗っていたブランコから、ぴょんと飛び降りてショーンの元へ駆け寄りました。そして、当たり前のようにショーンの左手を握りました。こうしてクレアが少しずつショーンに慣れてきていることが、嬉しく感じます。ショーンはクレアの手を取って、家への道を歩いていきます。
 二人が家に着く頃には、お日様が西へ傾き始めていました。西日が差し込む窓辺に、レースのカーテンをひいていきます。部屋のランプをつけると、オレンジ色の光で満たされました。
「さてと、今日は魚料理にしよう」
「おさかな?」
 クレアは目をきらきらさせて、食料庫の方を見つめています。さて、これから二人で夕飯の支度をします。ショーンは食料庫から、魚を取り出しました。既に塩で味つけがされているものです。クレアはショーンからレタスの葉を何枚かもらい、それを一口大にちぎることになりました。今日は、クレアも夕ご飯のお手伝いをします。
「そうだなあ、クレアにはエプロンを買っていなかったね」
「エプロン?」
「ああ、洋服が汚れてしまわないように、エプロンをしてから料理をするのだよ」
「ふうん」
 今日はひとまずこれで我慢しておくれ、とショーンはクレアに大きいエプロンをつけました。クレアは大きいエプロンをして、レタスの葉をちぎります。小さい器にちぎったレタスの葉を敷き詰めて、その上にミニトマトをのせました。こうすれば、立派なサラダになります。
「できたよ!」
「うん、ありがとう。じゃあ、テーブルへ置いておくれ」
「わかった」
 クレアは、大きいエプロンを外して、テーブルにサラダを置きました。ナイフとフォークも一緒に並べます。昨日、ショーンが置いていたのを真似して置いてみました。魚が焼ける匂いが、キッチンに広がっています。バターを溶いたフライパンに、味つけをしたサケがぱちぱちと音を立てています。ショーンがサケをひっくり返すと、こんがりときつね色に焼けていました。出来上がりまでは、もう少しです。
「もう少し待っていておくれ」
「うん」
 頷いたクレアは、大人しくサケが焼けるのを待っていました。ショーンはサケのムニエルを作っています。そして、空いているフライパンでジャーマンポテトを作っていました。どちらもいい香りがしてきました。
「さて、クレア。平たいお皿を取ってくれるかな」
「これ?」
 クレアは食器棚の中にある、平たくて大きいお皿を取り出しました。クレアの顔よりも大きなお皿です。ショーンが頷いたので、クレアはお皿をキッチンの台に置きました。二人分のお皿に、ショーンはサケのムニエルとジャーマンポテトを盛り付けました。盛り付けたお皿は、ショーンがダイニングテーブルへ置きました。クレアはその後をついて、ダイニングテーブルのイスに座りました。ショーンは、水差しとグラスを持ってきました。

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