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コップにたっぷりと注いだ水を、半分ほど飲み干した。
自分の荒い息遣いが、狭い部屋の中で大きく聞こえる。
久し振りに嫌な夢を見た。
あの人に置いていかれた、その日のことだった。
どんなに足掻いても、あの人は帰ってこない。
そんなことは分かっていた。
それでも尚、自分はあの人の事が忘れられない。

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静かな冬の日のことです。
雪に自分の足跡が続いています。
今は私1人分の足跡だけです。
2人で一緒に歩いた道を、1人で歩いてあなたの墓前に向かいます。
墓石を綺麗にし、お供物とお線香を上げて手を合わせて目を閉じました。
安らかに休んで下さい。
目を開け、涙で滲む墓石を私は知らんふりしました。

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無性に人恋しい時がある。
同じ空間に2人でいても、そう思う時がある。
言葉で説明したり表現するのは、すこぶる苦手である。
相手の首元に顔を寄せて、後ろからそっと腕を回して抱き締める。
相手も驚きこそするが、腕を振り払われた事は1度も無い。
頭をそっと撫でられ漸く上手く呼吸が出来る気がした。

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温かい缶コーヒーで、仮初めの暖を取る。
指先の感覚が徐々に戻ってくるのを感じた。
手が温まった頃にぬるくなった缶コーヒーのプルタブを開ける。
カコンという音が、路地裏に響く。
腕時計を見て、もうすぐ待ち合わせ時刻であることを確認する。
「やあ、お待たせ」
と飄々とした様子で相手はやってきた。

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桜が舞う時期に、あなたと出会った。
偶然同じクラスになり、互いの趣味である読書を通じて親しくなった。
本の貸し借りをするようになり、返ってきた本には一言二言の感想をメモした紙が挟まっていた。
そのメモを、大事に保存している。
私の宝物だ。
無口なあなたを知る事が出来る、唯一のものであった。

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お題:文通
お題提供:りおんさん

筆を取り、窓の外をぼんやりと眺める。
どういうことを伝えるべきか、頭の中で言葉がグルグルと回る。
そして、改めて白紙の便箋と向き合う。
聞きたいこと、伝えたいことは沢山ある。
しかしそれを便箋に書いていてはキリがない。
その為何個か厳選して幾つかの事項をしたためる。
窓の外は雪が降ってきた。

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飼っていた犬が逃げた。
首輪は道端に落ちていた。
名前を何度も呼んで、公園の植え込みの下まで確認した。
成果はゼロだ。どうするべきか悩みながら、家路をとぼとぼと歩いている。
等間隔にある街灯が、影を地面に長く伸ばす。
家が見えて来ると、玄関前に見慣れた犬がいる。
思わず家に向かい駆け出した。

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この季節になると、いつも手が冷たかった友人を思い出す。
冷え性なんだと言う彼は、ひょろりと背が高く痩せていた。
手袋を片方だけ貸してみたり、たまには手を繋いで帰ったこともあった。
それでも、お互いの気持ちを、確認し合わなかった。
怖かったのだ。
自分ばかりが、彼に思いを募らせている事実が。

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ひとつだけ、あなたに秘密にしていることがあります。
何もかもを開けっぴろげにしてしまったら、きっとあなたは私に飽きてしまうから。
だから、私はひとつだけ秘密を作りました。
この先、私は秘密を口にすることはないでしょう。
この秘密は、墓場まで持っていくつもりです。
あなたを好きという感情を。

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お題:お昼寝
お題提供:浅井さん

昼食を終えて、少しした後いつもこの時間になると必ず眠くなる。
「眠そうね」
皿洗いをしている彼女はこちらを振り向いてそう言った。
確かに瞼は重たいし、欠伸も出る。
でも、今昼寝をすると、君の姿が見えなくなる。
それは、勿体無いと思ったのだ。
「終わったら、一緒に昼寝しようよ」
「はい」

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