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「助けて」と言えたら良かったのに、と火傷の痕をなぞりながら今でも思う。
そう言えていたら、私は少しは綺麗でいられたかもしれない。
痕を気にして前髪をずっと伸ばし続けていなかったかもしれない。
私を気味悪がる人は、少なかったかもしれない。
それでも当時の私は助けてという一言が言えなかった。
*
彼女を守りたいと初めて思ったのは、随分と前の事だ。
アシンメトリーに伸ばした髪が印象的な子だった。そして無口だった。
髪の長い方から話し掛けると、彼女は決まって聞き返した。
不思議に思ったが問いはしなかった。
風が吹いた時に、右頰がチラリと見えた。
酷い火傷の跡が右耳に掛けて広がっていた。
彼女は慌てて、髪の毛を押さえた。
泣きそうな顔で、僕を見て何故か彼女は謝った。
こんな私でごめん、と。
僕は彼女にハンカチーフを差し出し、僕が君の耳になると伝えた。
彼女は静かに声を殺して泣いた。
ハンカチーフが、ぐっしょり濡れる程泣いた。
*
嬉しくて泣く日が来るなんて、思っていなかった。
差し出されたハンカチーフに、次々と涙の染みが出来、暫くするとぐっしょりと濡れてしまった。
落ち着いた頃に、大丈夫?と静かに聞かれた。
何度も頷いて答えた。
何か言葉を発すると、泣いてしまいそうだったのだ。
きっと彼は、それを察していただろう。
そう言えていたら、私は少しは綺麗でいられたかもしれない。
痕を気にして前髪をずっと伸ばし続けていなかったかもしれない。
私を気味悪がる人は、少なかったかもしれない。
それでも当時の私は助けてという一言が言えなかった。
*
彼女を守りたいと初めて思ったのは、随分と前の事だ。
アシンメトリーに伸ばした髪が印象的な子だった。そして無口だった。
髪の長い方から話し掛けると、彼女は決まって聞き返した。
不思議に思ったが問いはしなかった。
風が吹いた時に、右頰がチラリと見えた。
酷い火傷の跡が右耳に掛けて広がっていた。
彼女は慌てて、髪の毛を押さえた。
泣きそうな顔で、僕を見て何故か彼女は謝った。
こんな私でごめん、と。
僕は彼女にハンカチーフを差し出し、僕が君の耳になると伝えた。
彼女は静かに声を殺して泣いた。
ハンカチーフが、ぐっしょり濡れる程泣いた。
*
嬉しくて泣く日が来るなんて、思っていなかった。
差し出されたハンカチーフに、次々と涙の染みが出来、暫くするとぐっしょりと濡れてしまった。
落ち着いた頃に、大丈夫?と静かに聞かれた。
何度も頷いて答えた。
何か言葉を発すると、泣いてしまいそうだったのだ。
きっと彼は、それを察していただろう。
その少女は森の中の洋館に住んでいた。
時折来客が来るだけで、静かな洋館だった。
少女の両親と少女と、住み込みで働く手伝い人が数人居る。
少女は洋館裏手の庭を抜けて、森へと散歩しに行く。
彼に出会ったのは、春の日の事だった。
森の木々が芽吹きだして、森全体が薄い緑色に覆われている。
小鳥達の囀りが耳に心地良い。
少女は鞄の中から、本を取り出し木の根元に座り読み始めた。
木々の木漏れ日が、本のページをゆらゆらと照らす。
その時、草を踏みしめる足音に気が付いて顔を上げた。
時折来客が来るだけで、静かな洋館だった。
少女の両親と少女と、住み込みで働く手伝い人が数人居る。
少女は洋館裏手の庭を抜けて、森へと散歩しに行く。
彼に出会ったのは、春の日の事だった。
森の木々が芽吹きだして、森全体が薄い緑色に覆われている。
小鳥達の囀りが耳に心地良い。
少女は鞄の中から、本を取り出し木の根元に座り読み始めた。
木々の木漏れ日が、本のページをゆらゆらと照らす。
その時、草を踏みしめる足音に気が付いて顔を上げた。
「あなたは誰?」
焦げ茶色の髪の毛をし緑色の瞳を持つ青年は、少し驚いた顔をした。
「僕は、トム。君は……?」
「私はアリス。彼処の洋館に住んでいるの」
アリスが指差した方向をトムは見る。
何かを察した様にトムは頷いた。
何かを察した様にトムは頷いた。
「あの洋館のお嬢様か」
「ふふ、そんなお嬢様だなんて」
照れ臭そうにアリスは笑ってみせた。
「よく此処には来るの?」
「ええ、散歩がてら来ているわ」
「じゃあまた会える?」
トムは、少し遠慮がちにアリスに聞いた。
「勿論よ」
アリスの笑顔につられて、トムも笑顔になる。
これがトムとアリスの出逢いだ。
これがトムとアリスの出逢いだ。
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