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砂浜に埋めるようにアダンの実を並べる指先を見つめる。白い砂浜にオレンジ色の実が並んでいる様子は、なかなかの良い色調だった。何個か並べてみては、少し考えてまた位置を変えたりしている。
「何を作っているのですか。」
波の音に消されない程度の声で、問うと彼女は顔を上げた。眉下で切り揃えられた黒い前髪が潮風に揺れる。少し驚いたような顔をしてからにこりと笑うとまたひとつ、アダンを置く。
「墓場よ。」
風に舞う髪の毛を耳に掛けながら、そう言う彼女の顔は嬉しそうだった。言葉とは不釣り合いなその表情に違和感を感じながら、隣へと腰を下ろす。波打ち際では子供や観光客が、それぞれ海水浴を楽しんでいた。海水に浸かっている人々を見て、温泉じゃないのになと思う。どうせ海に来ているのだから、潜れば良い。そうした空想を巡らせている間も彼女は何も言わずに、アダンの実を砂浜に並べる。暫らく黙ってその様子を見ていると、唐突に言葉が鼓膜に流れ出す。
「戦争の時に死んだ人の骨って、どこにあると思う?」
「私には見当もつきませんよ。」
そう言って、彼女が並べたアダンの実を一粒摘み上げる。彼女は私の指先にあるアダンを見て、それはお祖父さんなのと言った。まだ真上にある太陽は、砂浜を白く焼き尽くしている。その光が反射して眩しくて目を細める。手に持っていたアダンの実を彼女に渡すと、元の場所に置いた。
「たくさんの人が死んで、骨はこの砂浜の下にあるのよ。」
砂浜が白いのは骨が潰されて砕けて枯れ果てたからだと彼女は言う。アダンの実は焼け爛れた体のようにも見えた。皮膚の層を焼いて、細胞膜に包まれる柔らかな肉のようだった。
「この場所は、戦場だったのですね。」
「これから、またなるのよ。」
(あの夏に彼女は死んでいた。)
「何を作っているのですか。」
波の音に消されない程度の声で、問うと彼女は顔を上げた。眉下で切り揃えられた黒い前髪が潮風に揺れる。少し驚いたような顔をしてからにこりと笑うとまたひとつ、アダンを置く。
「墓場よ。」
風に舞う髪の毛を耳に掛けながら、そう言う彼女の顔は嬉しそうだった。言葉とは不釣り合いなその表情に違和感を感じながら、隣へと腰を下ろす。波打ち際では子供や観光客が、それぞれ海水浴を楽しんでいた。海水に浸かっている人々を見て、温泉じゃないのになと思う。どうせ海に来ているのだから、潜れば良い。そうした空想を巡らせている間も彼女は何も言わずに、アダンの実を砂浜に並べる。暫らく黙ってその様子を見ていると、唐突に言葉が鼓膜に流れ出す。
「戦争の時に死んだ人の骨って、どこにあると思う?」
「私には見当もつきませんよ。」
そう言って、彼女が並べたアダンの実を一粒摘み上げる。彼女は私の指先にあるアダンを見て、それはお祖父さんなのと言った。まだ真上にある太陽は、砂浜を白く焼き尽くしている。その光が反射して眩しくて目を細める。手に持っていたアダンの実を彼女に渡すと、元の場所に置いた。
「たくさんの人が死んで、骨はこの砂浜の下にあるのよ。」
砂浜が白いのは骨が潰されて砕けて枯れ果てたからだと彼女は言う。アダンの実は焼け爛れた体のようにも見えた。皮膚の層を焼いて、細胞膜に包まれる柔らかな肉のようだった。
「この場所は、戦場だったのですね。」
「これから、またなるのよ。」
(あの夏に彼女は死んでいた。)
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