roika_works 【単発】この町は病んでいる 忍者ブログ
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この町は病んでいるのだ。灰色に塗られた町で道端に転がる生き物の肉片を視界の隅に置いたまま、ひたすら道を歩いている。どこに行くつもりもなかったのだけれど、朝起きて顔の横にあった猫の死臭からは逃れたかった。国が崩壊してから、今日で2270時間36分48秒経過している。

(まだ、取れないな。)

自分の周りの空気に、朝感じた死臭がまだしつこく纏わりつく。足元には誰のか分からない頭部だけが転がっていた。スニーカーの底で踏みつけるように転がすと、ぐちゃりと何かが潰れた音がした。不愉快だった。思わず舌打ちも出る。不自然に潰れた頭部の落ち窪んだ眼下には、白く虫が蠢いている。ぼろぼろになっている頭部は男か女かさえも分からなかった。

自分のように歩いて移動が出来る者は、あまり多くはないらしい。地面を這って移動をしているヒトの足先の爪は剥がれていて、赤黒く瘡蓋になっている。まるで何かの印のように道端に這いずり回った跡がある。どうせ行く当てがないのだからと、気紛れにひとつの印を辿ることにした。両足が動かなくなったのだろう、その印は血を交えながら地面を直線に割っていた。暫らくそうして足元の印だけを頼りに歩いていると、硬直し硬くなった足先と目が合う。顔を上げてから、その足の人物を見る。野良犬が食い散らかしたのであろう内臓が、無造作に飛び出ていた。千切られた小腸の表面を歩いている蠅が、動きを止めてこちらを見た、ような気がした。内臓を飛び出させて動かないヒトだが、さて、誰だったか。記憶の中を辿ってぼんやりと姿形を見知っているという記憶は出てきた。ああ、そうか。思い出したくないのだ。そう思い当たり、思考を巡らせることを放棄した。干乾びた小腸を手に取り、ぐるり、と振り回す。 嗅覚がとうとう壊れたのか、死臭も気が付いたら気にならなくなっていた。道端に小石のように転がっている頭部を見て、この町は病んでいると思った。

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