roika_works 【単発】雨色の憂鬱 忍者ブログ
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冷たい冬の空気を更に冷やすように、空から雨が落ちる。空気を冷やし、コンクリートを色濃く浸食していく様子を教室の窓から見ていた。
空を覆う雲は濃い灰色に染まり、町全体を包み込んでしまいそうだ。

「降ってきたんだ。」

ひょいと隣に現れて、いつもの笑顔を浮かべる。傘持ってきてないんだよなあ、と溜息を吐くその姿を見ながら濡れて帰れと返す。すっかり濃く濡れた校庭や、その先にある道路を見つめる。雨に霞む遠くの家の屋根を見てやはり雨は嫌だなと思う。アルミサッシを指で撫でながら外気との気温差を思って憂鬱になった。指先からじわりじわりと冷える感覚に、軽く身震いしてから手を引っ込める。

「一緒帰ろうよ。」
「…傘には、いれないから。」

ああ、雨は嫌だ。こいつの魂胆は目に見えているから、余計に嫌だ。雨の日の帰りのホームルームが終わった後に、必ず声を掛けてくるこいつが気に食わない。今時相合傘をしたいだなんていう男子はこれまで出会わなかった。明確に言葉として言われたことはないが、この男は態度や声色でそれとなく訴えかけてくるのだ。気付いて欲しいとでも淡い期待を持っているのだろうか。全くもって図々しいこと、この上ない。気付いて欲しいだなんて愛の押し売りにすぎない。

ああ、雨は嫌だ。
私はこいつがロッカーに折り畳み傘を隠し持っていることを知っている。

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