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聡史は、美咲からきたメッセージを何回か読み直した。女子とこうした何気ないやり取りをした事が無かったので、変な事を言っていないか今更になって気になってきたのだ。気にした所で、送ったものを消せる訳では無いのだが。
『普通の会話、だよな。』
部活の話、宿題の話、よくある話題だ。こういうのが女友達というものだろうか。その日の後も何回か連絡を取り合った。だが、美咲は返信が遅いと催促する事も無かった。
「おはー、聡史。数学のワークやった?私分からないのがあってさあ…。」
「おはよ。どこのページ?」
美咲がワークを鞄から取り出して、パラパラと捲り始める。それを横目で見つつ、自分のワークを聡史は鞄から取り出して同じようにページを捲る。
「五十六ページの問二のやつ。」
「ちょい待って。ああー、これか。」
確かに少し手強かった問題だ。自分は、なんとか解けたが、美咲は数学が苦手らしい。聡史は、教科書のページを捲り公式を探した。
「これ、この公式使うんだ。」
「どれどれ…。」
ふと、美咲が此方へ身体を寄せてきた。教科書に書かれた小さな文字を見るのだから当たり前だが、聡史は少し焦った。
「そっかあ、それかー。数学の授業迄に出来そうかなあ。」
「分からなかったら聞いてくれ。答えは言わないけど、ヒントなら出せるから。」
「うん、ありがとう。」
美咲はそう言うと、聡史の側から身体を離し自席に戻る。数学の教科書を捲る横顔は真剣だった。聡史は、何焦ってるんだよと自分自身に言い聞かせていた。
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