roika_works 【宴は満月の夜に】霧を掴む 忍者ブログ
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「狐浄、よく調べてくれた。粗方は理解したが、お主の考えを聞こう。」
ゆらりとお香の煙が立ち上る。狐浄は、持参した資料と月の暦を、狐幻の守の前に広げて見せた。
「今年に入ってから、反転している人間は全て新月の日だけでした。
昨年は、新月の日以外にも、反転した人間が数名おります。」
凛狐に預けた書簡を広げて、狐幻の守は日にちと月の満ち欠けを確認している。
「ほほう。何か狙いがありそうだな。」
「はい、私もその様に思います。力が弱まる新月を狙ってくるでしょう。
しかし、ひとつ分からない事が…。」
「ふむ、何であろう?」
「人間を反転させて、得られる利益があるのでしょうか?」
そう狐浄が問うと、狐幻の守は難しい顔をして腕組みをした。
「反転が規則的に行われる事によって、此方と彼方の世界の境界に揺らぎが生まれる。
その揺らぎによって、どちらかの世界が崩壊する様な事にもなりかねん。」
狐浄は自分が想像していたよりも大きな話だった事に、驚いていた。
落ち着けと自分へ言い聞かせた。
「次の新月までの間に、結界を強化します。
新月の日には、凛狐をお借りしても宜しいでしょうか…?万が一の為に。」
「ああ、構わん。お主が必要とする者なら、力になってくれるだろう。」
「有難うございます。」
深々と頭を下げ、狐浄は狐幻の守の元を後にした。

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