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自分は他人に対して興味が薄い方だと自覚している。周りに合わせて、愛想笑いをしている。「私は、貴方の事嫌いよ。」彼女は此方を見ずに夕陽を見つめる。「うん、知ってる。」彼女が自分に対して、特別な感情を持っていない事は知っていた。「貴方、私に似ているんだもの。他人に興味ない所とか。」

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痩せ型で背が高く、あまり喋らないそんな彼の手は、骨張っていて指が長く無機質なようであった。喜怒哀楽を殆ど言葉で示さないが、それでも目の色で最近は分かるようになってきた。バイト上がりの時は必ず「おつかれ」と微糖の缶コーヒーを手渡してくれる、彼の律儀でさり気ない優しさが好きだった。

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触れたら、粉々に壊れてしまいそうだと思った。穏やかな寝顔、規則正しい呼吸音、閉じられた目の縁に並ぶ長い睫毛、高い体温。他の誰にも見せたくない、と思うのは傲慢だろうか。深い眠りに落ちる位に、心を開いてくれているのだと思うと、何故だか泣きそうなくらいに嬉しかった。

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自室の窓からは、注意さえすれば屋根に上がることができる。その日も家族が寝静まる頃合いに、事前に準備しておいた靴を窓の縁に座りながら履いた。この時の高揚感溢れる気持ちを、何と言えば良いのだろうか。態々屋根に上がる理由は、唯ひとつ。今日は流星群がピークを迎えるからだ。なるべく音を立てずに、静かに屋根を伝い寝転ぶのに丁度良い箇所にそっと座った。この夜は非常に空が澄み、星がとても良く見える。ひとつ、ふたつと流れる星を見て、これは君にも見せてあげたかったなあと、ふと思い出になってしまった、君を思い出した。みっつ、よっつ、流れ星は僅かな感傷の間も流れ続けた。

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彼女に勝てることは、私にはひとつも無かった。背も高く文武両道で、どんな人にも優しく接する彼女は人徳がありいつも周りに人がいた。そんな彼女がふと呟いた「静かな所に行きたい。」彼女も知らないうちに周囲の人からプレッシャーを、受けていたのだ。彼女も完璧な訳ではないのだと少しほっとした。

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平々凡々な自分と、彼女はつり合って見えるだろうか?偶に挨拶がてら話すことはあるが、自分はその他大勢の一人だ。廊下ですれ違う度に、彼女から目を反らす癖が付いた。何も彼女に想いを伝えない自分は、臆病者以外の何者でもなかった。今の関係を壊すのが、何よりも恐ろしくて仕方がなかったのだ。

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数日前に比べると、大分日が延びてきているようだ。気温は大して変わり無いが、私は多少なりとも嬉しく思っていた。書物が煮詰まれば、気軽に散歩に出掛けられるようになったのだ。町内をぶらりと周り、河川敷の土手でぼうっとしながら、傾いてきた太陽を見ている。春はもうすぐそこにあるようだった。

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薄い唇に紅をさす。私は結婚をすることになった。お相手の顔を見たことは、無いままだ。話ばかりが誰も止められない程に、とんとん拍子に進んでいった。頬紅を薄くのせて「とてもお綺麗ですよ。」と目を輝かせて言う。鏡を見ると普段の自分とは、まるで違って見えた。まだ私は、現実味をもてなかった。

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風が強く吹き幾つもの花弁が舞う。薄い桜色のそれらは、どこか現実味が無かった。いつの間にか春になっていた。君がいない町で、また春を迎えている。惰性で引越しもせず、仕事も前のままで、うだつの上がらないただのサラリーマンだ。何年も前に居なくなった君を、無意識に探している。春は、苦手だ。

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小指だけを絡め、ベンチでぽつりと会話をする。夕陽が落ち、そろそろ帰ろうかという雰囲気が満ちる。そろりと離された小指の先が、やけに冷えて感じられた。「また明日。」公園近くの交差点で彼女は寂しげに「またね。」と右手を振り雑踏に紛れて行った。こうして彼女を見送るのが、僕等の毎日だった。

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