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『宴は満月の夜に』
・「再びの反転」追加

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「…?」
咄嗟に顔を覆っていた麗花は、そっと手を下した。
しまった。
異常なまでに赤い空を見上げて麗花は、震えた。
辺りを見渡しても、響子の姿は見えない。
どうやら、麗花だけが此方に来てしまったようだ。
「どうしよう…。」
自分が何処に居るのか、確証が持てないまま麗花は神社のベンチに座り込んだ。
どうやって元の世界に戻るのか、まるで分からなくて途方に暮れる。
赤過ぎる空に、耳鳴りがする程の静寂。木々の影が不気味に伸びる。
「あれ…。私、影が無い…?」
自分の足元を見ると、いつもある影が無くなっていた。どういう事なのだろう。
思わず立ち上がって辺りを見渡す。
木々やベンチには、きちんと影がついている。
この世界にとって異物である麗花には、影がついていないのか。
「困ったな…。どうしたら帰れるんだろう。」
狐浄は、次の新月に備えた対策について、孤幻の守に報告をしていた。
「!」
狐浄は、異変に気が付いて顔を上げた。
結界を張った者のみがその結界が破られた事に、気が付く事が出来る。
「反転した者が出ました。」
「そのようじゃの。」
孤幻の守は、頷いた。
「ひとまず、式神を送ります。」
その様子を見た凛孤は、人の形をした札に何やら書き付けている。
何やら小さな声で唱えると、人の形をした札は、風も吹いていないのに飛んで行った。
「すぐに様子を見て参ります。」
「ああ、頼む。凛孤、お主も行って参れ。」
「かしこまりました。」
そうして二人は連れ立って、孤浄の神社へと足早に向かった。
「ったく、大事な話をしている時に…。」
「まあ、そう苛々してもしょうがないわよ。面倒な事にならないと良いけど…。」




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『単発』
・「うたた寝」追加

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寝息を立てている君に、タオルケットをそうっと掛ける。
僅かに身じろぎした君は、薄く目を開ける。
「ごめん、起こしたね。」
「ん、大丈夫。ありがとう。」
髪の毛を撫でるとうふふと、君は笑った。
「ねえ、暫くこうしてて?」
「いいよ。」
君はゆっくり目を閉じる。
髪の毛を撫で、僕は君を見つめていた。

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『単発』
・「昔のあなた」追加

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窓についた雨粒は重力に引っ張られて、下へ下へと速度を増す。
その跡の一本筋は、まるで涙の跡のようだった。
彼と別れたのは、こんな日だったと思う。
雨がざんざん降る中、それでも彼の声だけは、しっかりと聞こえていた。
「俺じゃあ、駄目か。」
悔しそうにそう言った彼に、私はこう返事をしたのだった。
『これ以上、あなたの未来を奪いたくない。』
携帯電話に打ち込んだ文章を見せる。
私は耳が聞こえず話す事が出来ない人間だ。
意思表示は手話か、携帯電話に打ち込んだ文章で行っていた。
彼は、眉根を寄せて溜息をひとつ。
「俺はいつでも待ってる。待ってるからな。」
念を押されるようにそう言われた。
彼の瞳から、一粒涙が押し出された。

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「ねえ、本当に行くの?」
「え、やっぱり駄目?」
響子は少し残念そうな顔をして、帰り支度をしている。
「神社の敷地に入るのは、やっぱりやめよう?」
「うーん。そっかあ。」
帰りのホームルームが終わった教室は、がやがやと騒がしい。
響子と共に教室を出て、麗花はどうしたらいいか暫く考えていた。
「私だけ行ってきても良いよ?」
考え込んでいる麗花を見て、響子はそう声を掛けた。
「でも、心配だよ。」
それが正直な気持ちだった。自分が取り残されたときを考えると、ぞっとした。
カラスの鳴き声が聞こえてくる。もうすぐ例の神社が見えてくるところだ。
とうとう、神社の前に着いた。神社はいつもの様に、静かに風が吹いている。
「麗花、着いたね。」
「うん…。」
不安の中、麗花は神社を見つめる。この前の様な事が絶対起こるとは言えない。
しかしあの耳鳴りのする様な静けさの世界は、そう簡単に忘れる事が出来ないものであった。
「私、様子見てくるから、麗花は此処に居て?」
「え、一緒に行くよ。」
響子が歩道と神社を繋ぐ石段を上るのを見て、麗花もその後を続いた。
あ、この石段だった。ふとそう思った時、足首を引っ張られる様な感覚に襲われる。
麗花は、自分の足元に蛇が絡みついているのを見た。蛇は、真っ白な身体で赤い目をしている。
「響子!」
前にいる響子を呼び止めようと、麗花は声を上げた。
「麗花?」
響子は振り向いたが、そこには誰もいなかった。ただただ、風が吹くばかりである。
「麗花!」
慌てて数段の石段を降りて、歩道の左右を見渡しても麗花の姿は見当たらなかった。

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『単発』
・「生きる糧」追加
・「失くし物」追加

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ひとつ、ふたつと、無くしたものを数えていく。
ペンのキャップ、片方だけの靴下、数えればキリがない。
物を簡単に無くす性質を持った自分に呆れる。
逆に手に入れたものは、あるのだろうか。
新しいペン、新しい靴下、君からもらったキーホルダー。
最近思いつくものだとこんなものか。
以前、家の鍵を無くした際に、君からキーホルダーを貰ったのだ。
「これなら分かるでしょう、鈴がついているから。」
そう言って手渡されたキーホルダー。
貰った時よりも、うっすら傷が付いたり汚れたりしている。
これだけは、無くしたことがなかった。
不思議なものである。


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いつも通りの朝、いつも通りの通勤電車、いつも通りの仕事。
全部全部、いつも通りに終わる。
そして、私はいつも通り定時過ぎに会社を出る。
寄り道をする事は、殆んど無い。
そのまま、まっすぐ自宅へと向かう。
いつも通りの帰りの電車。
窓ガラスに映る私は、少し疲れた顔をしている。
でも、これもいつも通りのこと。
そして、自宅へ帰り着く。
玄関のドアを開け、ただいまと呟く。
にゃおん、と部屋から声が聞こえる。
明かりの点いた玄関へと我が愛猫は、やってくる。
いつも通りだ。
私は、この「にゃおん」を聞く為だけに
仕事に精を出していると言っても過言では無かった。


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