roika_works 【毒薬を飲み干したら-後日譚-】密会 忍者ブログ
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会社の先輩×後輩のほんのりBLなので、ご注意下さい。


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 今日は金曜日。明日は休みである。
『金曜の夜、空けておいてね。』
翔(かける)からそう連絡があったのは、水曜日のことであった。
特に先約もなく家にいるよりは、翔(かける)と話す方が有意義であろうと思い、了承の旨を竜也(たつや)は返信していた。
仕事も滞りなく、なんとか定時過ぎには上がることが出来た。
周りの同僚に挨拶をして、竜也(たつや)はオフィスを出た。
エレベーターホールで下層行きのボタンを押して、暫くエレベーターが来るのを待っていた。
チンとエレベーター到着の音と、翔(かける)が現れたのはほぼ同時だった。
「あー、待って待って。」
小走りで来る翔(かける)を見て、竜也(たつや)はエレベーターの『開く』ボタンを押した。
「お疲れ様です、翔(かける)先輩。」
「竜也(たつや)くんも、お疲れ様。」
お互いに仕事の労をねぎらい、竜也(たつや)は『閉める』ボタンを押してエレベーターの扉を閉めた。
目的階である『1』のボタンを押すと、エレベーターはぐんぐん下層へと進んでいく。
「仕事は順調?」
「はい、今のところはなんとか。」
「うんうん。それは良い事だ。」
翔(かける)は満足そうにそう言って、にこりと笑った。
「翔(かける)先輩の方はどうですか?」
「うち?まあ、いつも通りだねえ。今日は早く上がるからって宣言してきたよ。」
「なんだか、すみません。」
「いいのいいの、僕が竜也くんのこと誘ったのだからさ。気にしないで。」
「はい。」
目的階に着いたエレベーターの扉が開く。
『開く』ボタンを押して、翔(かける)を先に下ろし竜也(たつや)はその後に続いた。
「今日は何処へ行くんですか?」
「僕のお気に入りの店。静かで良い所だよ。」
外食を滅多にしない竜也(たつや)は、オフィス周辺の飲食店しか知らなかったので、楽しみになった。
何より翔(かける)が勧める店なので、雰囲気の良い店なのだろうなあと竜也(たつや)は想像を膨らませていた。
 「竜也(たつや)くんは、飲めないお酒ある?」
「ええと。ウイスキーとかは、まだ苦手ですね…。」
「なるほどね。確かに僕も竜也(たつや)くん位の時は、飲めなかったなあ。」
翔(かける)は顎に手を置いて、自身の記憶を思い出しているようだ。
「翔(かける)先輩は、苦手なお酒あるんですか?」
「そうだなー。泡盛とか?大体飲めるけどね。」
「す、凄いですね。」
「僕、お酒は好きな方だからね。」
そう言って翔(かける)は、竜也(たつや)に笑い掛ける。
「今日行くお店は、ご飯ものも充実しているから、夕飯代わりになると思うよ。」
「そうなんですね!有り難いです…。お腹空いていたので。」
照れ臭そうな竜也(たつや)は、自身のお腹に手をあてた。
昼食以降、何も食べていなかったので胃が鳴った。
「はは、そうだったのかい。沢山お食べ。」
駅から少し離れた路地に、その店はあった。
地下へと続く階段を下りて、茶色の木製ドアを押して開ける。
ドアを開けると、ベルの音がカランカランと響いた。
「いらっしゃいませ。」
店員がやってきて、二人に礼をした。
「予約していた、鏑木(かぶらぎ)です。」
「はい。お待ちしておりました。此方へどうぞ。」
案内された個室の部屋に、竜也(たつや)は緊張していた。
こういった店に来るのは初めての事だった。
掘りごたつ式の和室で、飾棚には一輪差しや置物などが置いてある。
どれも高価そうなものだが、決して嫌みに見えないのがこの店の凄い所でもある。
辺りをキョロキョロと見回して、翔(かける)がお勧めするのも納得だなあと竜也(たつや)は思った。
「良い雰囲気のお店ですね。静かだし、良かったです。」
「ガヤガヤした飲み会も好きだけど、僕はこういった店で飲む方が好きなんだよ。」
「お先に、お飲物のご注文を承りますが如何されますか?」
店員は伝票を持ち、翔(かける)へと尋ねた。
「とりあえず生を2つで。大丈夫?」
ちらりと竜也(たつや)の方を向いて、翔(かける)は聞いてきた。
竜也(たつや)は頷いて答えた。
「じゃあ、とりあえず飲み物はそれでお願いします。」
「かしこまりました。」
個室の襖を閉めた店員が去り、それぞれコートや上着をハンガーに掛けて席についた。
「わ~、なんだか緊張します。こういったお店初めてで。」
「そうなんだね。でも、僕がいれば大丈夫でしょ?」
翔(かける)がそう言うと、竜也(たつや)は少し安心した顔で頷いた。
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