roika_works 【単発】告白 忍者ブログ
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今にも泣きそうな顔をしてこちらを見つめる瞳をじっと凝視する。甘い雰囲気だなんてとても言えなかった。目尻に薄っすらと膜を張った様を見て、次に瞬きをしたら溢れてしまうだろうなと悠長に思った。酷く悲しんでいるのは見て分かったが、何が原因なのかは皆目見当がつかない。わざわざ慰めるほど自分の性格が優しくないことは、よく知っている筈なのに何故こういう顔をするのか。不愉快だった。困ったように眉尻を下げ、ごめんなさいと言う。怒った覚えも叱った覚えもないのだが、と思うが口にはしなかった。代わりに溜息が漏れる。好きです、涙が一粒また溢れた。その言葉はそんな顔をして言うものなのだろうか。向けられた言葉は、突き動かされるような強さはなく部屋に浮かんで霧散した。返事はしなかった。黙ったまま、頰に触れるとそこはしっとりと濡れていた。こういう顔はさせたくないと漠然と思った。それが好意からくるのか、同情からくる感情なのかまだ自分には区別がつかなかった。驚いたように瞬く目尻を親指でそっと拭う。ぷつり、と親指に乗った涙はゆっくりと重力に引っ張られ下へ下へと落ちていった。

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