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『単発』
・「風、吹きすさぶ」追加
・「君と共にあった音」追加

『毒薬を飲み干したら-後日譚-』
・「密会」追加

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遠くにどんよりとした雨雲が見える。
足音もなく、しかし確実に此方へ向かってくる。
風が強くなってきた。
君が話す言葉を聞き取るのが、難しくなる。
「僕は大丈夫だから。」
風邪がびょうびょうと吹きすさぶなか、それだけ伝える。
彼女は頷いて、笑った。
そして、煙の様に消えてしまった。

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サラサラと音が聞こえる。
砂時計の砂が落ちるような、
波が打ち寄せるような。
サラサラ。
君が髪の毛を梳かすような、
カーテンが風で揺れるような。
サラサラ。
動かなくなった君のような、
小鳥の羽ばたきのような。
サラサラ。
君の骨が零れ落ちるような、
僕の頬を伝う涙のような。

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会社の先輩×後輩のほんのりBLなので、ご注意下さい。


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そこで、麗花(れいか)は今日の一連の流れを、を狐浄(こじょう)に説明した。
親友に話しをして、2人で神社へ行こうということになり、神社へ来たこと。
一瞬、足首に赤目に白蛇が巻きついていたこと。
此方の世界に来た時に、睡蓮が札を渡し麗花の姿を隠してくれたこと。
2人の男性らしき物の怪が、神社内で麗花を探し回って他の場所に探しに行ったこと。
特に、2人の特徴は事細かく説明をした。
麗花が話しをしている間は、狐浄も凛狐(りんこ)も口を挟まなかった。
時間は掛かったが、麗花が知り得ることを全て話した。
「それで全部か?」
狐浄は、自分の額に手を置き溜息を吐いた。
「はい。そうです。」
深く頷いて、麗花はそう告げた。
「厄介なことになりそうだね、狐浄?」
凛狐もいつになく真剣な表情で、狐浄に問うた。
「ああ、厄介も厄介。まさか、龍神と蛇の目が手を組むとはな…。」
2人が話している内容がよく分からない麗花は、静かに黙っていた。
その様子に気が付いた凛狐は、麗花の肩に手を置き目線が同じ高さになるまで屈んだ。
「麗花ちゃんが悪い訳じゃないから、気落ちする必要は無いよ。」
「はい…。でも、ご迷惑をお掛けしてしまったのでは…?」
「まあ、お前さんが狙いだったのは確かだろう。何か心当たりはあるか?」
困った顔をする麗花に、狐浄は言う。
「いえ、何も…。」
「過去に川や海で、何かなかったか?」
「綺麗な石や貝殻を集めるのが好きで、持ち帰ったことなら何度か…。」
「そうか。そういった人間は、お前さん以外にも多くいるから、それが理由とはならないかもな。」
狐浄はそう言い赤く染まった空を見上げる。雲ひとつない、血の様に赤い空を。
「私は一旦、狐幻の守(こげんのかみ)様へ報告に行ってくるわ。」
「ああ、頼む。書簡は明日中に、俺が直接持って行く。」
「了解。それじゃあね。麗花ちゃんの話、聞いてやりなさいよ。」
「ったく。分かってるつーの。」
溜息を1つ吐いて、狐浄は凛孤に答えた。
「それなら良いわ。麗花ちゃん、またね。」
「はい。」
睡蓮を連れて凛孤は、神社を後にした。
なんとなく気まずい沈黙が流れる。
「お前さんが見た白蛇は、俺達と敵対している集団の象徴だ。」
「そうなんですか…。」
「奴等は、この世界を破壊して再構成するつもりだ。その為に、人間の反転が多くなっている。反転が立て続けに起こると、世界に揺らぎが発生しやすくなる。その揺らぎを最大限利用して、この世界を潰すつもりだ。」
「それは…。人間の世界にも影響が出るのですか?」
「まあ、多少なりともあるだろうな。どの程度の影響が出るのか、まだ俺でも分からんが。」
大層な話になり、麗花は孤浄の話についていくのがやっとだった。
その反転とやらが鍵となっており、自分が反転してこの世界へとやってきたのは分かった。
「お前さんは、反転しやすいのだろうな。澤野だろ?姓に水が関連しているから、龍神がこちらに引き込みやすいんだろうと思う。仮説だけどな。」
そう言って孤浄は麗花の様子を伺う。やはり、申し訳なさそうな顔をしたまま、手をぎゅっと握り締めたままだった。
「お前さんは悪くない。利用しようとしている奴等が悪いんだ。」
「はい…。」
「全面戦争とまではいかなくても、彼方此方で小競り合いが起こる筈だ。お前さんは、人間界に戻る方が良いだろう。」
「何も出来なくて、ごめんなさい。」
麗花はそう言うとぽつりと涙を溢した。この世界の揺らぎを増幅させてしまったのは、紛れも無く麗花の反転の影響もあるからだ。
ぽつりぽつりと零れる涙が、制服のスカートに濃く染みを作っていた。
何も出来ず、ただ元の世界に帰ることが、麗花は悔しかった。
ただ、この世界で麗花は無力だった。何も出来ないのは、重々分かっていた。
「私を囮にして、例の2人組みを此処へ呼び戻すことは可能ですか?」
「やろうと思えば出来るだろう。しかし、お前さんへ危害を加える可能性が高い。却下だ。」
「私、このままじゃ帰れません。」
「そんなこと言ってどうする。お前さんは、人間世界に戻って暮らした方が、安全だ。」
「嫌です。帰りません。」
麗花は頬を伝っていた涙を、制服の袖で拭って孤浄の目を見てそう伝えた。
意志を持った目は孤浄の目を射抜いていた。それ程に、麗花は覚悟を決めていたのだ。そこで、麗花(れいか)は今日の一連の流れを、を狐浄(こじょう)に説明した。
親友に話しをして、2人で神社へ行こうということになり、神社へ来たこと。
一瞬、足首に赤目に白蛇が巻きついていたこと。
此方の世界に来た時に、睡蓮が札を渡し麗花の姿を隠してくれたこと。
2人の男性らしき物の怪が、神社内で麗花を探し回って他の場所に探しに行ったこと。
特に、2人の特徴は事細かく説明をした。
麗花が話しをしている間は、狐浄も凛狐(りんこ)も口を挟まなかった。
時間は掛かったが、麗花が知り得ることを全て話した。
「それで全部か?」
狐浄は、自分の額に手を置き溜息を吐いた。
「はい。そうです。」
深く頷いて、麗花はそう告げた。
「厄介なことになりそうだね、狐浄?」
凛狐もいつになく真剣な表情で、狐浄に問うた。
「ああ、厄介も厄介。まさか、龍神と蛇の目が手を組むとはな…。」
2人が話している内容がよく分からない麗花は、静かに黙っていた。
その様子に気が付いた凛狐は、麗花の肩に手を置き目線が同じ高さになるまで屈んだ。
「麗花ちゃんが悪い訳じゃないから、気落ちする必要は無いよ。」
「はい…。でも、ご迷惑をお掛けしてしまったのでは…?」
「まあ、お前さんが狙いだったのは確かだろう。何か心当たりはあるか?」
困った顔をする麗花に、狐浄は言う。
「いえ、何も…。」
「過去に川や海で、何かなかったか?」
「綺麗な石や貝殻を集めるのが好きで、持ち帰ったことなら何度か…。」
「そうか。そういった人間は、お前さん以外にも多くいるから、それが理由とはならないかもな。」
狐浄はそう言い赤く染まった空を見上げる。雲ひとつない、血の様に赤い空を。
「私は一旦、狐幻の守(こげんのかみ)様へ報告に行ってくるわ。」
「ああ、頼む。書簡は明日中に、俺が直接持って行く。」
「了解。それじゃあね。麗花ちゃんの話、聞いてやりなさいよ。」
「ったく。分かってるつーの。」
溜息を1つ吐いて、狐浄は凛孤に答えた。
「それなら良いわ。麗花ちゃん、またね。」
「はい。」
睡蓮を連れて凛孤は、神社を後にした。
なんとなく気まずい沈黙が流れる。
「お前さんが見た白蛇は、俺達と敵対している集団の象徴だ。」
「そうなんですか…。」
「奴等は、この世界を破壊して再構成するつもりだ。その為に、人間の反転が多くなっている。反転が立て続けに起こると、世界に揺らぎが発生しやすくなる。その揺らぎを最大限利用して、この世界を潰すつもりだ。」
「それは…。人間の世界にも影響が出るのですか?」
「まあ、多少なりともあるだろうな。どの程度の影響が出るのか、まだ俺でも分からんが。」
大層な話になり、麗花は孤浄の話についていくのがやっとだった。
その反転とやらが鍵となっており、自分が反転してこの世界へとやってきたのは分かった。
「お前さんは、反転しやすいのだろうな。澤野だろ?姓に水が関連しているから、龍神がこちらに引き込みやすいんだろうと思う。仮説だけどな。」
そう言って孤浄は麗花の様子を伺う。やはり、申し訳なさそうな顔をしたまま、手をぎゅっと握り締めたままだった。
「お前さんは悪くない。利用しようとしている奴等が悪いんだ。」
「はい…。」
「全面戦争とまではいかなくても、彼方此方で小競り合いが起こる筈だ。お前さんは、人間界に戻る方が良いだろう。」
「何も出来なくて、ごめんなさい。」
麗花はそう言うとぽつりと涙を溢した。この世界の揺らぎを増幅させてしまったのは、紛れも無く麗花の反転の影響もあるからだ。
ぽつりぽつりと零れる涙が、制服のスカートに濃く染みを作っていた。
何も出来ず、ただ元の世界に帰ることが、麗花は悔しかった。
ただ、この世界で麗花は無力だった。何も出来ないのは、重々分かっていた。
「私を囮にして、例の2人組みを此処へ呼び戻すことは可能ですか?」
「やろうと思えば出来るだろう。しかし、お前さんへ危害を加える可能性が高い。却下だ。」
「私、このままじゃ帰れません。」
「そんなこと言ってどうする。お前さんは、人間世界に戻って暮らした方が、安全だ。」
「嫌です。帰りません。」
麗花は頬を伝っていた涙を、制服の袖で拭って孤浄の目を見てそう伝えた。
意志を持った目は孤浄の目を射抜いていた。それ程に、麗花は覚悟を決めていたのだ。

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『単発』
・「風化する記憶の中で」追加

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貴方は大切な人の事、どのくらい記憶していますか?
顔、声、背格好、歩き方、視線の動き、身振り手振り、少し困った様な笑顔、大きな掌。
2人のルールはありましたか?
歩く時には手を繋ぐ様になっていること。
どんなに遅くても家には帰ること。
私は貴方にどれくらい記憶して貰えているのでしょうか。

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真実を全て語るのが、優しさではないよ。
時には優しい嘘も必要さ。
君には、ただの偽善に聞こえるかもしれない。
だがね、真実が人を傷付けることも、大いに有り得る事なのでね。
僕は偽善者だから、優しい嘘を吐く。
真実を伝えて、傷口を抉る事を、僕はしたくないのだよ。
どちらが本当の優しさだろうね。

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『単発』
・「思い出せないこと」追加

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分かるかい?
四季が巡る度に、少しずつ指先から溢れ落ちて行くもの。
そう、過去の記憶だ。
新しい記憶に押し退けられ、過去の記憶はどんどん遠くへと行ってしまう。
霞掛かった記憶は、輪郭を朧げにして、いつしか手の届かない場所へと行ってしまう。
指先から溢れ落ちた記憶は、二度と戻る事はないのだ。

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