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しんしんと雪が降り積もるなか、私達は居間で夕飯を食べる。
「今日、クリスマスですよね。」
智恵子は2人で囲む鍋の具材を取り分けながら、そう言った。
「噂では知っているよ?」
鍋の具で満たされた取り皿を受け取り、卓は縁側を見る。
珍しく積もりそうな雪の振り方をしている。
「やはり、何処か出掛けたかったかい?」
「いえ、卓さんと居られればそれで充分です。それに、この雪ですしね。」
「まあ、ねえ。こんなに降るとは思わなかったよ。」
この地域では異例の積雪だった。
普段あまり雪が降らないので、非日常感が町を包んでいた。
「天気予報って本当に当たるものですね。」
「そうだねえ。」
2人で鍋を食べながら、のんびりと過ごすのもまた良いものである。
世間で言うクリスマスとは、ほど遠い様な雰囲気ではあるが。
それが自分達には合っていると卓は思っていた。
煌びやかなイルミネーションに白い雪が被るのは、非常に幻想的な風景だろう。
夕飯を食べ終えて、片付けが済んでゆっくりお茶を飲もうということになった。
「さて、実は君に渡すものがあるのだよ。取ってきても良いかい?」
「私にですか?ありがとうございます。」
そうして一旦居間を離れる。
ふう、と1つ溜息を吐く。
雑然とした自分の書斎へと向かい、以前より用意していた小箱を取り出す。
さあ、いよいよ緊張してきた。
しかし、居間に智恵子を待たせている卓は早く戻らなければならなかった。
覚悟を決めて、居間へと戻る。
「お待たせ。」
「いいえ。」
落ち着いた君の声は、心地よく耳に響く。
智恵子の向かい側へと座った卓は、小箱を取り出してみせた。
「クリスマスプレゼントだよ。」
「わあ、ありがとうございます!」
嬉しそうに笑う智恵子の顔が見れて、卓は胸を撫で下ろした。
漸く緊張もさざ波の様に引いていく。
プレゼントに選んだのは、花をモチーフにしたアメジストの小さなネックレスだ。
智恵子は嬉しそうだが少し困った様な顔をして、卓に尋ねる。
「こんな高価な物を私が頂いて良いのですか?」
「勿論さ。気にすることないよ。」
「つけて頂いても…?」
「ああ、私がするよ。」
智恵子の側へ行き、卓は受け取ったネックレスを智恵子に着ける。
ほのかに香るシャンプーの匂いがした。
「はい、出来た。」
「ありがとうございます。似合いますかね?」
「うん、勿論さ。よく似合っている。」
恥ずかしそうに笑う智恵子を褒めると、頬を赤くした。
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