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『あの好きは、恋愛感情でって意味だよなあ…。僕は、どうなんだろう。』
竜也(たつや)は自分の感情をどう位置付けるか、まだ決めかねていた。
確かに翔(かける)を慕っているし、好いている。
だが、それが恋愛感情なのかどうかと問われたら、首を捻る。
『同性を好きになったことが、これまで無いから分からない…。』
そっと翔(かける)の手を握り返す。
温かな掌に落ち着くのは、何故だろう。
繋いだ手を解いても良い筈なのに、それが出来なかった。
この心地よい温度を手放すのが、惜しく感じるのだ。
『こういう風に思うのは、好きということなのかな…。』
暫くそうして腕の中で、考えていると翔(かける)が目覚めたようだ。
「おはよう。竜也(たつや)くん。」
「あ、おはよう…ございます。」
何事も無かったように挨拶をする翔(かける)に、こちらの方が緊張をしてしまう程だ。
瞬きをしている、ガラス玉の様な瞳に竜也(たつや)は、釘付けになる。
この人は瞳がとても澄んでいて綺麗な人だ。
「翔(かける)先輩。」
「ん?」
「僕、翔(かける)先輩のこと、好きなんだと思います。でも、それが恋愛感情だってハッキリ言いきれなくて…。」
「そうだよね。ゆっくり好きになってくれたら嬉しいな。」
「なんか、すみません。こんな答えしか出せなくて。」
中途半端な答えしか出せない自分が、竜也(たつや)は情けなかった。
しかし、それでも翔(かける)は責めるようなことは言わなかった。
「大丈夫だよ。僕等はどうなるんだろうねえ。」
「えっと、一応お付き合いする形になるんですかね…?」
「いいのかい?期待しちゃうよ?」
冗談めいてそう言うと翔(かける)は、竜也(たつや)の頭を撫でた。
「翔(かける)先輩と、こういう風にしているの嫌いじゃないですし。」
「またそうやって殺し文句を…!」
翔(かける)は困ったように頭を抱えて見せた。
竜也(たつや)は自分の言葉を反芻して、恥ずかしくなって何も言えなかった。
「僕をからかうの好きですよねえ、翔(かける)先輩。」
「ほら、好きな子には、意地悪したくなるだろう?」
「好きな子って…。」
二人で目を合わせると、何故だか笑ってしまった。
「まさか、僕のこと言ってます?」
「そりゃあ、そうだよ!」
「翔(かける)先輩も、充分殺し文句言ってるじゃないですか…!」
「天然で言える、竜也(たつや)くんには遠く及ばないよ!」
翔(かける)は、演技かかった口調でそう言う。
それに思わず笑ってしまった。
竜也(たつや)は、翔(かける)の手を握り直した。
「これから、よろしくお願いしますね。翔(かける)先輩。」
「こちらこそ、ね。」
竜也(たつや)の額に口付けて、翔(かける)は優しく頬を片手で包んだ。
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