roika_works 何気ない高校生活 忍者ブログ
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「じゃあ、また明日ね〜。」帰りのホームルームが終わると、美咲は部活へと向かった。読んでいた文庫本に挟んだ栞の位置を確認して、カバンの中へとしまう。今週中には、読み終わりそうだな。「桐ヶ谷って、松井と仲良いの?」前の席に座っている男子から不思議そうに聞かれた。「んー、友達なんだ。」

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「聡史、おはよー。」自席で文庫本を読んでいた所に、美咲が来た。「おはよ。」短い返事に愛想も何も無いなと苦笑する。「そういえば、連絡先教えて。昨日聞き忘れてた。」急な話題転換は、美咲の得意分野なのかもしれない。「いや、いいけど…。俺、頻繁に返事とか出来ないぞ?」「うん。大丈夫!」

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「そりゃあ、良いけど…。」と、歯切れの悪い返事をする。「じゃあ、今日から友達ね、よろしく!」と、彼女は嬉しそうに笑った。何だかんだと話しながら、駅に着いた。「回り道させて、ごめんな。」「気にしないで。また明日ね!」駅で彼女が自転車で去っていくのを見送り、駅のホームへと向かった。

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「何が勿体ないんだ?」と彼女に問うと、「もっと早く仲良くなれたかもしれないじゃない?私、聡史とちゃんと話したの、初めてだし。」確かにそうだ。まともに話したのは、今日が初めてだった。「そういうのタイミングだしな。」と言うと彼女は目をきらりと輝かせた。「聡史は私と仲良くしてくれる?」

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「私達、今迄話した事殆ど無かったよね。」今回は席替えで隣になったから、話をする機会があったのだ。「そうだな。普段いるグループも違ったし。」彼女はチア部のグループ、そして僕は帰宅部のグループと行動を共にする事が多かったのだ。「そうね、折角同じクラスだったのに、勿体無かったよねー。」

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「そういえば、杉浦に聞いたんだけど…。聡史、野球やってたんだって?」美咲の問いに、聡史は冷たい氷が心を蝕んでいくのを感じた。杉浦は、中学野球で共にプレイした仲間だ。「肘、やっちゃってさ。」美咲は察したのか、ごめんと呟いた。「大丈夫だよ。昔の事だし。」と心にも思ってない事を言った。

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「美咲は、何でチア部入ったの?」呼び慣れない名前に、少しだけ緊張する。「私さ、中学はバレー部だったのね。同じ体育館で練習してるチア部を見て、ずっと憧れてたんだ。今では人を応援するっていうのも、良いなと思ってるよ。」そう言うと彼女は、過去を見る様に遠くを見つめていた。

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「私の下の名前は、美咲だよ。」彼女は、さらりと教えてくれた。これは、下の名前で呼んでも良いのだろうか。「美咲さんは…」そう言いかけた時に、彼女は「聡史、呼び捨てで良いよ、さん付けだと照れ臭くてさ。」名前を呼ばれる度に、心臓の鼓動が激しくなる様な気がした。「ありがとう、美咲。」

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「そういえば、下の名前何?」自転車を手押しで進める彼女は、そう言った。「聡史だけど…。」夕日に照らされた僕等の影は、長く伸びて歩道を黒く塗りつぶす。「名字、呼びにくいから下の名前で呼ばせてよ。」彼女はこちらを向いて、微笑む。心臓の鼓動が速くなる。「じゃあ、僕にも下の名前教えて?」

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「ごめんね、待たせちゃって。」彼女は、自転車を押しながら小走りでやってきた。「ううん、大丈夫だよ。行こっか。」風が彼女の髪の毛を掠め、夕陽がキラキラと反射する。「うん、そうだね。」これまで彼女とは殆ど話をした事が無かったのだが、このやり取りは教室にいた時よりも自然に行われていた。

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