roika_works 忍者ブログ
Twitterで投稿した小説やイベント参加情報をまとめています
Admin / Write
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「ごめんね、待たせちゃって。」彼女は、自転車を押しながら小走りでやってきた。「ううん、大丈夫だよ。行こっか。」風が彼女の髪の毛を掠め、夕陽がキラキラと反射する。「うん、そうだね。」これまで彼女とは殆ど話をした事が無かったのだが、このやり取りは教室にいた時よりも自然に行われていた。

拍手

PR
「日誌、出しに行かないと。」彼女は立ち上がって、支度が済んだ鞄を持つ。夕陽が差し込み彼女の顔が橙色に染まった。帰り支度を整えた2人は、職員室にいる担任に日誌を提出した。日直の仕事は、終わりだ。「帰り道少し話せる?」あまり期待を、掛けずに彼女に問う。「良いよ。自転車取ってくるね。」

拍手

「例えば、好きな教科は?」僕は当たり障りのないボールを投げる。「強いて言えば、英語。貴方は?」彼女は帰り支度の済んだ鞄を机に置き、席に着いた。「僕は科学が好きかな。実験が好きなんだ。」彼女は少し驚いた様子で「意外ね、貴方は文系なのかと思ってた。毎日小説を読んでるから。」と言った。

拍手

「話すって何を?」彼女は少し困っている様だった。困らせるつもりでは、なかったんだけどな。「席替えで隣になったからさ。仲良く出来たら良いなと思ったんだ。」クラスでも一目置かれている彼女は、親しい友人が居ない様に見えた。僕は、お節介ながら心配をしていたのだ。「貴方、変わってるのね。」

拍手

凛とした横顔、真っ直ぐ伸びた背筋。彼女はまるで、薔薇の様だと思った。「用が無いなら、私は帰るけど。」今日は二人で日直だった。日誌を書き終え、そろそろ日直の仕事を終える所だ。「用は無いけど、もう少し一緒に話したい。」ぽろりと出た本音に自分でも驚いた。彼女はもっと驚いた顔をしていた。

拍手

靴を履いた後、左足の爪先をトントンと2回、彼の癖だ。「行ってきます。今日は早く帰れると思うけど、また連絡する。」玄関で彼はいつも通りの台詞を言う。「行ってらっしゃい、気を付けて。」私もいつも通りの台詞を言う。いつも通り、これが如何に幸せで有難い事なのか、よく分かっていた。

拍手

貴方は何時もそうして誤魔化して、私はそれに気が付かないふりをしていた。この生活はいつまで続くのか、不安になった。しかし、私は貴方から離れる様な選択が出来なかった。選択肢にさえ、挙がらなかったのだ。共依存と言われればそれまでだけれど、私は貴方と離れることは、どんな事よりも辛いのだ。

拍手

「1つだけ、願いが叶うなら何をお願いする?」彼は文庫本に視線を落としたまま、そう呟いた。「何?」私は、ぼんやりと返事をする。「小説の台詞だ。自分だったら、どうする?」成る程、と心の中で納得した。「私はいつまでも一緒に居られるように、とお願いする。」そう答えると彼は頷き、微笑んだ。

拍手

彼女は寡黙であった。会話は必要最低限、聞かれたことに対する答えのみ。無口ではあるが、彼女は人の話を無視するようなことはしなかった。一度彼女に問うたことがある。「あなたの事もっと知りたいな。」彼女は困ったような様子で「私は、弱い人間だから全てを話す事が怖いの。」と答えた。

拍手

アスファルトに雨粒が一つ。じわりと広がり吸い込まれていく。次々と雨粒が落ち、やがて水溜まりを作った。新しい靴を下ろしたばかりの自分はガッカリしながら、下駄箱から靴を取り出す。ビニール傘を広げ校門を見やると、赤い傘を差した彼女が立っている。自分に気が付いた彼女が、小さく手を振った。

拍手

48  49  50  51  52  53  54  55  56  57  58 

忍者ブログ [PR]